いそぎ夏のナス
「今日のメインは焼きナスにしよう」
Bはそう言って、買い物袋からナスを取り出した。軽く水洗いしたのち、まな板の上にナスを置いた。
Bはナスを手で押さえ、包丁を当てて軽く引く。ナスが縦半分に切れ、片方がまな板の上に転がった。白いまな板の上に紫色のナス。それを見て、Bは何か思い当たった風にあ、と言った。
「お盆だったけれども」
切ってしまったな。そう口に出す。
数秒か動きを止めたBであったが、ややあって、ナスを持ったまま、流しの横の戸棚を開ける。爪楊枝の容器から楊枝を二本取った。Bは半分のナスを、紫色の部分を下にして小皿に乗せ、上になった白い部分に二本の爪楊枝を横向きに置いた。
「これでお願いしますよ、ご先祖様。船の使い方はわかるでしょう。おそらくきっと、空も飛べる船だ」
Bは皿を窓際に置き、まな板の上に残っているもう半分のナスをグリルに入れて火をつけた。
残りの半分は私が食べます。そう呟く。
ナスの焼ける香りが漂ってきた。
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