真夏、買い物帰り

 じりじりと太陽が照りつける。熱されたアスファルトのせいで歩行者は下からも上からも熱気にさらされている。

 人っ子一人いない住宅街を、CとBは言葉を発さず歩いている。

 蝉の声が響いている。CとBの歩みは木陰に差し掛かった。

「蝉の声の種類ってさ」

 Bがおもむろに口を開く。

「色々な種類に分けて聞き分けることができるよね、楽器と同じで」

 Cは無言で頷く。

「楽器を聞き分けられないときのように、蝉の声もさ、聞き分けられない人にとっては一緒に大勢で鳴くひとつの音みたいに聞こえるのかなあ」

「さあ。俺は聞き分けられるからわからない」

「そう」

 それっきり、会話は途切れる。

 雪が恋しいなあ、とBは呟いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る