3-6 アガルタでの食料集め
俺達はまず一番近くの食料店に入ると、売られている食材を眺める。
「ふーん、見た目は大体変わらないもんだな……」
多くの食材が俺が元いた世界と変わらない形をしたものが多かった。
時たま7色の野草等々見たこともない形の食材がとんでもない値段で売られたりしていたが……。
「味はどうかな、味見とかできるのか?」
「どうでしょう? あそこの店主に聞いてみます?」
リリスはそう言いながら店の前に立つリザードマンを指さしていたが、その体は俺の後ろに隠れていた。
「怖いのか?」
「……人と関わることが少なかったので」
「まあ、そうか……」
このリリスの人見知りも何とかしなければ、まあ店を開いたら慣れていくか。
俺はそんなことを軽く考えながら店主に話しかける。
「なあ、ちょっと聞きたいんだが」
「どうした兄ちゃん、若い子連れて逢い引きかい!」
「あほか、そんなことより、店の中の食材は味見できるか?」
「ああ、銅貨3枚で味見し放題だ! ただし1人ひとつだけどな!」
「ほう、それは良心的だ」
「この街で行き倒れても困るしな、周りの料理店はバカ高いからサービスだ」
俺は店主に銅貨を渡して店の中に戻る。
リリスも店主にぺこりと一礼すると俺のあとをついてくる。
そして試しに目の前にあったレモンらしきものを手に取り、かじる。
「すっぱ!」
それは俺が知っているレモンの数倍酸っぱく感じられた。しかも味は知っているものより悪い。
「これは……大丈夫か?」
「アモンさん大丈夫ですか?」
「ああ、ちょっとビックリしただけだ」
まあ味は知ってるものに近いし、少しくらい違っても大丈夫か?
「それくらいは妥協するしかないか……」
俺は自問自答を繰り返し、自分を納得させるとそれぞれ味見しながら食材を手に取っていく。
「こんなもんか……」
しばらくすると俺の片手は食材が大量に入った袋を握っていた。
「さて次は道具か……」
そもそもここにカクテルを作るのに必要な道具なんて売っているんだろうか……。
リリスなら何か知ってるだろうか。
俺はそう思いリリスの方を見ると、リリスはどこか一点を見つめていた。
「どうしたリリス」
「へ? あ! いや綺麗だなと思って、あのお店」
リリスが指さした方は多くの人が歩いているだけだ。しかしその奥になにか光るものがある。
「目がいいんだな……」
俺も目を凝らしてよく見ると、確かにショーケースが見えた。
そしてそのショーケースの中に俺の求めているものが飾られていた。
「あれは……」
俺は思わず走る。その後ろを必死にリリスが追いかけてくるが正直リリスのことを考えていられなかった。
人をかき分けショーケースの前に辿りつくと、それを今一度眺める。
「アモンさんどうしたんですか?」
「でかしたぞリリス」
人にもみくちゃにされ髪が乱れているリリスの頭を乱雑に撫でると、リリスの髪はさらに乱れる。
「ど、どういうことですかぁ」
突然の俺の行動に困惑しているのかリリスの混乱した声が聞こえる。
しかし俺はそんなことお構い無しにショーケースに飾られたそれを眺めながら、リリスの頭を撫で続ける。
「まさかあるとは……入るぞ」
俺はリリスの頭から手を離すと、ショーケースがある店『ガラス細工店』へと足を踏み入れる。
ショーケースに飾られていたのは間違いなくシェイカーそのものだった。
興奮している俺の姿に首をかしげながら、リリスも髪を直しながら後ろをついてきた。
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