3-5 革命都市アガルタ

人気がない所で降り立つと共に、俺は自身に変化術をかけて、人間の姿に化ける。

それを確認したリリスは透過を解く。

そしてそれと同時にリリスはその場にへたり込む。


「どうした?」


「どうしたって……急に飛んでるし、すごいスピードで進んでるし……疲れました」


「まだこれからだぞ」


「うっ……」


リリスはよろめきながら立ち上がろうとする。

確かに自身だとあんまり分からないけど、乗ってる方は相応に疲れるか……。

しょうがない。

俺は立ち上がろうとしていたリリスの頭を抑えると再び座らせる。


「アモンさん?」


「ちょっと休憩するか」


そういうとリリスはほっとしたように息を吐いた。


「それにしても全然近くなかったな」


「すいません…」


飛んだから一日でたどり着いたもののまともに歩いていたら、3日くらいはかかっていただろう。多分寝ずに3日。


「まあ、結果オーライか……。しかし凄いな」


目の前にそびえ立つドームはその存在感を見せびらかすようだった。


「……もう大丈夫です」


「もういいのか?」


「はい、大分落ち着いてきました」


そう言いながら立ち上がるリリスの息は先ほどより落ち着いてるようだった。

どうやら嘘はついてないみたいだ。


「じゃあ行くか」


2人はどデカいドームの前に立つと、他の人がしていたのを見様見真似で、リリスが街の入り口にあったドームのくぼみに軽く手を触れた。

するとドームが人一人通れるくらいに開く。


リリスの後に入ると突然の眩しさに思わず目を伏せる。

街の中はまるで太陽が照らしているように明るい。

街の人たちもニブルに比べて心なしか明るく活気に満ちているように見える。


「これは記憶にないな……」


アガルタがこんな閉鎖空間だった記憶はアモンにはない。


「このドーム『光ある日』のあと一週間で完成させたようです。このドームの中はいつも太陽があるように明るいんです」


リリスはすこし胸を張りながら、誇らしげにそう語る。

これも行商人から盗み聞きしたのだろうか。


そしてリリスは少し物憂げな表情を見せながらあの日の太陽に憧れてと、呟きながら空を見上げた。

空、というかドームはまるで太陽が出てるように輝いていたが、その奥に見える本物の空は今日も相変わらず、今にも雪が降り出しそうな白い厚い雲で覆われていた。


「光ある日とは?」


「アモンさんは知らないですか? 一年中雲におおわれているこの世界に二年前突如一日だけ太陽が顔を見せたのです。伝説とされていた存在すら確認されていなかった太陽が顔を見せたとたん人は、みな一日中太陽の明るさに怯え、喜び、崇めました。しかし、その後太陽はまた雲に隠れてしまったのです」


まさか、あの日がそんなおおごとになっていたなんて……。


「それで光ある日か……」


「はい、再び太陽の気まぐれが起こるよう人々はその日を『光ある日』として崇めるようになりました」


俺は頭をかきながら街の中へと歩を進める。


「……本当に明るいな」


俺は久々の明るい光に思わず目を瞬かせる。中央に行けば行くほど明るくなっている気がする。


「はい、しかし、太陽の暖かさは再現できなかったようです」


確かに温度差は外とそんなにないようだった。街の人たちが着ている服も全員厚着に見える。


「しかし、ここはいつ来ても奇妙だな」


街を歩いているのは蛇頭、馬頭、犬頭いろいろな魔族たちと人達だった。

いくら記憶にはあるとはいえ街中を普通に魔族が歩いているのは、衝撃だ。


「魔族が生活できる代わりにここには勇者連合のものはいません、立ち入ることもできません」


街のなかで乱闘が起こるのを防ぐためか…

しかし、商店を開いているのはすべて人間だった。


「……じゃあ必要なものを買いにいくか」


道具、食料、酒……買うものは大量にある。

俺達はどこか違和感があるアガルタの街を歩きはじめた。

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