3-3 銭貨ソロモン王
しばらくして目が覚めると俺より先に眠ったはずのリリスはまだ机に突っ伏していた。
窓からは淡い橙色の光が差し込んでいる。
夕刻くらいか……。
結構寝てたようだな……。
「やっちまったなぁ……」
俺は眠りこけているリリスを眺めながら大きく伸びをする。
……それにしてもよく寝る。
あれからしばらく疲れているのだろうリリスを寝かしてやろうと思ったのだが……。
もう日は落ちてしまい、外は完全に真っ暗。そして光をもちあわせていないこの家の中も広がるのは暗闇だ。
俺は指先に炎を灯し目の前を照らす。
といっても照らしたところで、ヨダレ垂らしながらだらしない顔をしているリリスしかいないのだが。
「はあ……」
それにしてもこいつはいつまで寝てるんだ。
……そろそろいいか。
俺はそこまで甘くない。やることはまだまだあるのだ。
それに十分寝かしてやったくらいだ、外は徐々に明るみを帯びてきているのだから。
「いくらなんでも……」
俺は手に灯していた炎を消し、そのまま手を振り上げる。
「寝すぎだ!」
そしてリリスの頭に向けてなんの躊躇いもなく、その手を振り下ろした。
「ふべ!」
俺のチョップをくらった瞬間身体を浮かせて飛び起きたリリスは、泣きながら頭を抑えて俺を見上げる。
「な、何するんですか!」
「何もくそもあるか、外を見ろ」
俺は窓の方に指を指す。
リリスはゆっくりと窓の方に目を向けると、バツが悪そうな顔をして俺の方に向き直す。
「寝ちゃってましたか」
「ああ、日が変わるくらいにはぐっすりとな」
「すいません」
「ま、疲れてたんだろ」
「それでも、すいません」
リリスはぺこりと頭を下げる。
その頭頂部は少し赤くなっていた。ちょうど俺がチョップをかましたところあたりだ。
「俺も悪かったよ」
下げているリリスの頭を軽く撫でる。
「おはよう」
「おはようございます」
顔を上げたリリスの顔は少し赤くそして笑顔だった。
どうやら疲れは取れたみたいだな。
「なあリリス、金、持ってるか?」
日が昇り暖かい日差しが部屋にさし始めた頃おもむろにそう尋ねる。
「ちょっとだけなら」
リリスはどこからか金貨を持ってくると机に丁寧に置いていった。
そういえばこの世界の金を見るのははじめてだった。
金貨が1枚、銀貨が3枚、銅貨が……数えるには、少し億劫な量。
銭貨には全て人の顔が刻まれていた。
「金貨が1枚、銀貨1枚、銅貨30枚です」
「ほーん、ここに刻まれてる人は誰だ?」
「この世界を統べる王、ソロモン王です」
「世界を統べる王ねぇ……」
「といっても誰もそのお姿を見たことないから、これも想像のご尊顔なんですけどね。ソロモン王は魔族も亜族も人族も関係なく、全て平等に扱うと言われてます」
「へー、できた王様だな」
というか、誰も姿を見たことないなんて、よくそんなのが世界統治なんてできるな。
しかしソロモン王……どこかで……。
そんなことを何となく考えた瞬間に、頭に一瞬鈍い痛みが走る。
「グッ!?」
「だ、大丈夫ですか!?」
俺の異変に気づいたのかリリスが血相変えて立ち上がる。
「大丈夫だ……」
俺は頭を抑えるが先程の痛みはもうない。
なんだ今のは?
「ほんとに大丈夫ですか?」
「ああ……て、そんな俺ひどい顔してたか?」
「見たことない顔でした……」
「そ、そうか。まあほんとに大丈夫だから気にすんな」
「そ、そうですか」
リリスはほっとしたように再び椅子に腰かける。
「さてと……」
俺はリリスが持ってきてくれた金貨をコロコロといじる。
頭痛ぐらいでいちいちきにしてられない。
「そういえばお金なんてどうするんですか?」
「そうだなぁ、なあリリス。この辺に街ってどこかにあるか?」
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