2-2 空腹の末たどり着いた廃墟
どのくらい歩いたのだろうか、それももう分からない……。
俺は霞む視界のなかで前方にやけに古びた古民家を見つけた。
あそこなら……あそこなら飯があるかもしれない!!
俺は空腹の限界を超えた末に見えた幻覚、本物だとしても何も無いということを疑いすらせずに、早歩きでその古民家へと向かった。本当は飛びたいくらいだったけど、あいにくそんな力は残っていなかった。
それにここで飛んでしまえば、獲物を待ち伏せしているアーチャー種の勇者に狙撃されて、余計に疲れてしまうことになる。
そして、俺は道路のはしっこにポツンとたつ崩れかけの、そこに存在しているのに誰も気にすることの無い古民家に到着したのだった。
「飯はないのか…」
俺は一応の警戒をしながら古民家に足を踏み入れた。
ギシッという今にも崩れそうな木の床の音と同時に襲ってきた埃臭さに思わず鼻を塞ぐ。
どれだけこの家が放置されていたかなんてのは、家のそこら中に積み上げられた埃の量と腐りかけの壁、床ををみれば一目瞭然だ。
やっぱりこんな所に食い物なんてないかもしれないな……。
こんな場所どんなバカな勇者だって罠を仕掛けないに違いない。
「いや、あるかもしれない…あるさ、きっとある」
俺は自分でもよくわからなくなっている思考の中、自問自答を繰り返しそう広くない古民家の中をうろうろと歩き回った。
そして、俺はある一角の引き出しに目をつけた。
「あの引き出し怪しいな…」
2階に繋がる階段の下隅の方に置かれた引き出しは違和感丸出しだった。
そのクローゼットだけ妙にほこりがかぶっていなかったのだ。
「怪しい、うん、怪しい」
俺はクローゼットに近づくと一気に戸を開けた。この時ばかりは興奮していて罠とかそういうことは一切頭になかった。
まあ罠だとしても罠くらいで俺が死ぬとも思えないし。
「ひい!ごめんなさい!」
その中に縮こまるようにして座っていたのは真っ白なほかほかのご飯ではなく……白いワンピースを着た女の子だった。
「…………」
こんな所に人がいるとは思ってなかった俺は思わずクローゼットの扉に両手をかけたまま目の前の女の子をのぞき込むような体勢で固まってしまった。
「ご、ごめんなさい…?」
そんな状況に困惑しているのであろう。
女の子は長い前髪の隙間から覗かせている赤い小さな目を怯えるようにキョロキョロさせながら、俺の方をチラ見してくる。
「……飯、あるか?」
目の前で怯えている女の子に尋ねることはただ一つ。この子がなんでこんなところにいたのか、一人でなにをしているのか。
そんなことはどうでもいい。
俺は力なく再び目の前の女の子に問いかける。
「飯は、あるか?」
「あっちに」
女の子はオドオドと俺がまだ見ていない場所、2階の方を指さす。その手は真っ白で俺がよっぽど怖いのか小刻みに震えていた。
しかし今の俺には関係ない。
女の子の言葉を最後まで聞くことなくクローゼットを勢いよく閉めると、階段を4段飛ばしで上がった。
なんか背後で「ふべっ」という可愛らしくも女の子らしくないうめき声が聞こえたがきっと気のせいだ。
やっと飯が食える!!
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