ボイス

隅田 天美

私は私の声を忘れた

「お前の声って不気味な」

 誰かに言われた。

 まだ、小学校にも入ってない子供の頃だ。


 私はショックだった。

 毎日虐められ、誰にも助けてもらえず、嘘をつき、平然と装っていた。

 

 自分を変えた。

 舞台俳優のように腹から声を出し、できるだけいい声でを出そうとした。

 話し方も変えた。

 関東人なのに大阪弁を話すようになった。

 会話を途切れさせにために知識をどん欲に吸収した。


 結果。

 今の私は自分の声を忘れた。

 衝撃的だった。

 自分の言葉も失った。

 私には人に対する怒りと自分に対する絶望しかない。

 本当の自分がどれだけ浅はかで無知か痛いほど知っている。

 どれだけ臆病かも知っている。

 だから、自分を消したい。

 自分を消して、もう、泣きたくない。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ボイス 隅田 天美 @sumida-amami

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ