第14話熱き想い、踏み出す1歩

美羽に促されたまま宮村は束の間の安らぎに終止符を打ち、事務所に向かった。それでもやはり時間は思った以上にかかりそうだった。それでも当初の予定よりかは随分と早くに戻ってこれた。


「家まで送ろうか?」

「いえ、大丈夫です。帰れますよ?だから匠さんは少しでも早くに待ってる人の不安…取り除いてあげてください?」

「美羽…」


不意に名前で呼ばれた美羽は一瞬降りるのを躊躇った。そうして待ってしまった時に宮村はそっと美羽の手首をつかんだ。


「…また付いてる。匠でいいって…」

「あ…はい…」

「じゃぁまた後で…連絡する…」


そう言われて美羽は車を降り、宮村は事務所の駐車場に車を入れる。そうして美羽は家路に向かい、宮村は重たくのしかかる心をもったまま、事務所に上がって行った。扉を開けると相沢ともう1人、木村は泣きそうになってた。


「お疲れ様です!匠さん!!」

「いや、別に大丈夫だけど…それで?」

「ワイズプロモーションの社長様がいらして…」

「それは聞いている。それで、一応20時には約束したが、相手の様子とかは?」

「それは…」

「……あぁー、解った。一度連絡取ってみる」


そうして宮村は社長室に入って行った。こんな時彼女なら詳細に話してくれて手の打ちようの施しも、対策も練れたのに。事務職においても彼女が、美羽が不可欠であり、秋人にとっても、自分自身にも美羽が必要となっている。一体どうしたものだろうか…色々と考えてはみるものの、全くの手掛かりがない以上、当人に連絡を取ってみなくてはならない事が結論付いた。


『お電話ありがとうございます、ワイズプロモーション、菅生が承ります。』

「お忙しい所申し訳ございません。クリスタル・レインボーの宮村と言いますが。」

『お世話になっております。安田へのお繋ぎでよろしいでしょうか?』

「お願いします。」


そうして繋がるのをまった宮村。時期に電話は通話状態になった。


『お待たせしました。安田です』

「先程は失礼いたしました。クリスタル.レインボーの宮村です。」

『先程はどうも』

「えぇ、今こちらに戻ってきてまして。お約束の時間20時と聞いてましたが早めたり等ご都合、いかがでしょう?」

『早いに越したことはないからな。それでは1時間ほど後になるが、そちらに向かうとしよう。それでいかがでしょう?』

「解りました。ではこちらでお待ちしています。」


そうして切れた電話。その間に宮村は秋人に連絡を取っている。しかし繋がらず、デスクに来ていた仕事へと目を移した。それぞれの日報や報告等のチェック、その他諸々の契約状態等、仕事は終わらせても時期に湧いてくる。そんな時だ、トイレに行き、戻ってくるとタイミングよく先方の社長は来ていた。


「お待たせしました。」

「いえ、こちらも今着いた所ですので。」


やはり、一事務所の社長だけあって、宮村よりは歳を召している。それでもどことなくやつれた様子もなく元気は有り余っている様子だった。そんな相手を連れて宮村は社長室へと向かっていった。


「どうぞ」

「これは失礼…」


扉を開けてソファへ案内すると、『ふぅ…』と一息ついてどさりと腰を下ろした。


「さて、早速ではあるが話の本題と行こうか。」

「そうですね。それで…今回はうちの榎本が何かいたしましたか?」

「いや。実はだね。ウチの看板モデルのSATSUKIが御社の榎本氏と付き合っていると。こういった事実を耳にしましてね。まぁ本人から聞いたわけではないので事実かどうかに関しては今は不透明であるという事と…あと、本人にごく近い人間からの言葉なんだが…」

「…?はい?」

「………SATSUKIが妊娠していると…そう聞いたんだ。もしその相手が御社の榎本氏であるとしたならどうしたものか…といった点でね。何か当方聞いておりますか?」

「ちょ…っと待ってください?うちの榎本が…という事でしょうか?」

「あぁ。」

「しかし、榎本とワイズの早川さんがお付き合いさせて頂いていたのはもう何年も前の事。その事実は確認取っていますが、今榎本にそう言った類の女性は居ないと…聞いておりますが?」

「…となると、うちのSATSUKIと御社の榎本氏、我々と各マネージャー…すべて合わせて一度話し合いの場を設けても良い…という事と取れるが?」

「問題ありません。それでしたらお日にちと時間。いつにしましょうか?」


宮村の思っていた話とは雲泥の差といった内容のものだった。秋人に特定の想い人は居ないといったものの、その存在に関しても周知している。それでも今の現状でそれを話すのは得策ではないと考えたのだ。そうしてまた明日にでも日程を決めようとなり、安田は事務所を後にした。それを見送った宮村は即座に秋人に電話を掛ける。


『…もしもし?』

「秋人か?今時間いいか?」

『匠さん?いいですけど…』

「今どこに居る?」

『今ですか?大手町ですけど?』

「すぐに事務所、来れるか?」

『今からですか?何かあったんですか?』

「何もなかったら呼び出したりしない。」

『……美羽の事ですか?』

「いや、違うがそのうち関わってくる」

『…解りました。少し時間はかかりますけど…』


そう返事をして電話は切れると宮村は美羽に電話をする。


『もしもし?』

「お疲れ様。ごめん、今から近々の秋人の予定、メールで送ってくれるか?」

『秋人の?』

「あぁ。ワイズの社長との話し合いの日程を組まなくちゃならん。」

『それで秋人も同行するんですか?』

「そうなる。その時には美羽も来てもらう事になるが…」

『…解りました…今から早急に送ります。』

「ありがとう…」


そうして電話を切った宮村。ドサリとソファ相手に項垂れると天井を見上げた。


「…ハハ…俺はまだ『匠さん』の確率が高いってのに秋人はまだ呼び捨てか…」


少しもどかしいような…羨ましいような感覚に陥っていた。ぼうっとしていたからか…時期に美羽からメールが届いた。確認をしておおよその目処は付け終えた。

翌日…宮村の元に連絡が入る。3日ほど日にちを伝えられ、その内の1件がちょうど秋人も午前中のみの仕事の日だったためその日にする事になった。宮村から連絡が入り、秋人も美羽も解りました…と返事をした。その日はちょうど1週間後。時間は18時を予定された。場所は個室の日本料理の店だった。双方ともに仕事終わりという事もあって服装に関しては全く問題はなく私服での参加でよかったものの時間厳守という事だけを申し伝えられた。


話し合い当日。時間よりも早めに到着した美羽。次いで秋人も到着した。あれから未だに関係の修復には至らず、行き帰りに関しても、同じくそれぞれが別行動になっていた。


「お疲れ様。」

「お疲れ様です。」

「秋人は?」

「お手洗いに行かれていましたよ?」

「そっか。」


合流した宮村も辺りを見回していた。そうして秋人が戻って時期にワイズの面々も全員集合した。


「では行きましょうか?」

「そうですね」


そうして中に入り、予約されている個室に入って行った六人。席に着き、食事は後程…と伝え、一旦店員が離れると安田が口火を切った。


「さて、急ではあったが集まってくれてありがとう。クリスタル・レインボーの皆様もこちらの都合に合わせて頂いて申し訳なかったです。」

「………」

「今回集まってもらったのも他ではない。うちの早川さつきと、御社の榎本秋人さんの関係の事実確認をしたく、集まって頂いた次第ですが」

「…ッ」


一瞬にしてさつきの顔がピりついた。


「双方の本人の意見、考えを聞かせて頂きたい。」

「意見って…」

「本音を聞かせて頂こうと思う。」

「私!!私は秋人と付き合ってます!」


そのさつきの言葉を聞いて、美羽の心はドクンと高鳴った。本人の口から聞きたくなどなかった言葉だ。本人から聞きさえしなければ、まだ心の持ちようだってあった。それなのに…そんな美羽の気持ちと裏腹にさつきは続けた。


「今まで黙っててごめんなさい…でも秋人と離れるなんて…別れるなんて考えられなかったの…報告したら反対されるんじゃないかって怖くなったの…それで言い出せなかった…ごめんなさい…」

「こういっているが?秋人、どうなんだ?」

「……ッッ」

「…秋人…?」

「…もうやめてくれ…」


ぽつりと呟くように秋人が口を開いた。その言葉を聞いて、今度はさつきがドクリと胸を高ぶらせた。


「秋…人?」

「もういい加減に…解放してくれよ。…さつき…」

「何言って…!私達付き合って…」

「付き合ってなんかねぇだろ…!はっきりしなかった俺も悪いし、どうにも何ねぇよ。それでももう…俺が限界なんだよ…嘘つきながら過ごすの…」

「何言って…るのよ!嘘よ!秋人は嘘ついて…」

「少し落ち着きなさい、さつき。榎本君?聞いていいか?」

「…はい…」

「1つ目…付き合っている事実はないのか?」

「はい。」

「2つ目…嘘を吐きながら…とさっき君は言ったね?何に対して、誰に対して嘘をついていたんだね?」

「…それは……」

「それは?」


1つ深呼吸をして、秋人は安田の方を真っ直ぐに見てゆっくりと答える。


「それは…俺が、1番大切にしたい人への嘘です。こんな嘘何て吐きたくなかった。好きで、大切な女性に嫌いになったふりを続ける事。気持ちは冷めたと突き放す事…俺自身の心と、愛したい女性へ…」

「それはこのSATSUKIが相手ではない、という事かね?」

「はい…」

「3つ目…これで最後だが…今SATSUKIが妊娠している、といった話をっ身に挟んだんだが?その件に関してはどうかね?」

「全く身に覚えは御座いません。」


これ程までに無い位にきっぱりと秋人は答えた。相反してどんどんと、見ている間に顔色が悪くなってきているのはさつきの方だった。


「さて、…してSATSUKI?これに対しての反論は?」

「私は…秋人と付き合ってるのよ?」

「いい加減にしろ。美羽に対してのやっかみだろ!俺は美羽に対してお前が手ぇ出すって言ったから…何するか解んないっていって…それが嫌なら別れたふりでもいいからやれって!そういっただろ!もういい加減にしてくれ…さっきも言ったけど俺は限界だよ…お前に付き合ってんの…」


そう言うと美羽の手を引いてそのまま秋人は、言うだけ言って退席してしまった。残された宮村とワイズからの3名は止める事も出来ないまま2人を見送ってしまった。ふと気づいたかのように宮村は安田に対して頭を下げた。


「本当に申し訳ございません。大切な人材に対しての無礼な口のきき方…まだまだ若僧故に指導の行き渡っていない所、思い知らされました。早川さんにもうちの秋人の口の悪さ、傷付けてしまって済まなかった事…お詫びします。」


そういい立ち上がり、宮村は想定内だったかのように1通の封筒を出した。


「これは?」

「こちらはお納めください。私どもの分…とでもいいましょうか。……しかし…」


そういいながら宮村は椅子をしまい、出口に向かう前にひと言付け足した。


「今後、我がクリスタル・レインボーのタレントには一切近付かないでいただきたい。加えて同、マネージャー然りです。その旨、心に止め置きください。」


そういうと宮村は残る3名に対して軽く頭を下げて退室した。残された3名は顔色様々だった。安田にしてみたら相当な痛手だ。売出し中で、若手の男性モデルで比較をすればS4に適うものなど今の時点で自身の事務所に居ないのだ。メディア側にしてみたらやはり、数字の取れる方、人気のある方を使いたく思うのは当然の事だ。


「はぁ…」


この溜息にすべてが凝縮されているように感じた。

その横でさつきは小さく震えていた。両サイドを固められ、逃げ場を失う。秋人には裏切られ、目の前で自分以外の女への愛情を見せびらかされた…心の整理…今後の自身の居場所は?…そんな不安が色々に、ぐちゃりと混ざり合っていた。そんな中で店員を呼び、安田は『申し訳ない…チェックアウト…』と伝え、食事をせずにキャンセルとして店を出る事にした。一方の秋人と美羽は、秋人の車の後部座席にいた。押し込まれたままの美羽は気が動転していた。


「ねぇ秋人!待って…」

「……」

「秋人!」


少しの沈黙の後、そう呼びかける美羽の言葉にふぅ…っと1つ息を吐くと、まっすぐに美羽を見つめた秋人はそのまま美羽の小さな手を握りしめたまま話し出す。


「さっき俺が言った事は嘘じゃない。さつきと付き合ていない…っていうか…本当に今までごめん…」

「ごめん…良く私が理解できて無いの…整理させて?」

「…ん」

「さつきさんとは付き合ってないの?」

「付き合ってねぇ」

「さつきさんのお腹の子供は?妊娠してるって…」

「あれは…俺じゃない。父親は別にいる。」

「それをなんで秋人との子供だっていうの?」

「ただの美羽に対しての嫌がらせだ。」

「そんな事言ったって…本当かウソかなんてすぐにばれちゃうのに?そうしたら、さつきさんだって芸能界に居れなくなる。それどころか生まれてくる子供だって…」

「芸能界がどうとか…そんなのあいつにとってはどうでもいいことなんだよ。ただ俺とよりを戻したい、その為には美羽が邪魔で…だからその為にマネージャーを使って…」

「マネージャーって…」


そんな時だった。窓ガラスをコンコンと叩く音がして顔を上げると、そこには宮村が立っていた。扉を開けて2人は出てくると申し訳なさそうな美羽と、顔を背ける秋人。小さく息を吐くと少し笑みを浮かべながら2人に話し出した。


「全く…これじゃぁ言い逃げだろうが…でもちょうどいい。時間が空いたな。2人とも少し付き合え。」

「え?」

「たまにはいいだろ?夕飯兼ねて少し話しよう」


そういい3人はそれぞれ自身の車に乗り込んで、宮村の車に続いて進んでいく。個室で話もしやすく、しかしワイズコーポレーションの社長が用意した店よりかはよほど肩も凝らない感じの店だった。


「いらっしゃいませー!」


元気のいいお姉さんがトコトコと足早にやってくる。3名で禁煙室に通して貰った。粗方注文を済ませると待つ間に色々と話をするべく口火を切ったのは宮村だった。


「…さて、さっきの話し合いの続き、というかな。まだはっきりとした回答を俺は貰っていないが?」

「回答…ですか?」

「あぁ。」

「私何にも言ってなかったし…」

「いや、美羽じゃない。」

「美羽?」


一瞬秋人の顔がこわばるかの様に見えたものの躊躇う事なく宮村も続けた。


「秋人、早川氏のお腹に子供がいるのは本当か?」

「はい。ただし、俺の子じゃないですけど…」

「じゃぁ聞こうか?誰の子だ?」

「……」

「秋人?」

「さつきの…あいつのマネージャーです」


その言葉を聞いて再度美羽の頭は混乱した。そう、やはり何度聞いても美羽には理解が出来なかったのだ。


「ねぇ秋人、やっぱり理解が出来ないんだけど…」

「は?」

「だって、子供を作るってすごい覚悟だよ?そんな容易になんて作れないよ。その子の人生だってあるし、さつきさんやマネージャーさんの人生だって…」

「まぁそうだろうな。既婚者だし。」

「…!?!?!?」


宮村は気付いていたものの、やはり美羽は動転していたのか気付いていた様子はなかった。そう、さつきのマネージャーは既婚者だった。それなのになぜさつきと行為に及び、加えて妊娠なんて…


「さすがにあの方は怖いですね。」

「聞いた時は俺だって怖くなった。さすがにな?だけど俺に対しての損害はないって言ってる。まぁどこまでかはしらねぇけど。」


さらりと言い放つ秋人に、宮村は続けて聞いていた。


「じゃぁ次の質問、美羽への気持ちは?」

「さっきから気になってるんですけど…」

「質問してるのは俺なんだけど?」

「先に答えてください。匠さん、美羽の事呼び捨てにしてません?」

「当然だろ、俺の大事な彼女だ?」

「…あのっ!ちょっと…」

「美羽は黙ってろ…」


そうぴしゃりと美羽の言葉を遮った秋人。丁度そんな時食事が運ばれてきた。しかしなかなか箸をつけづらい空気になっていた時だ。宮村から『先にどうぞ?』と促されて美羽は少しずつ食べ始めた。そんな中男2人の話し合いは続いている。


「俺のマネージャーなんですけど?」

「だからなんだ?マネージャーであって恋人じゃないだろ?それに前に言っていたはずだが?内は社内恋愛禁止ではないと。それが例え社員同士であっても、社員とタレントであってもだ…と」

「聞きましたよ…」

「……あの…まず食べませんか?せっかくのお料理…冷めちゃいます…」


そうやって今度は美羽から促されて2人も箸を持ち、食べだした。


「匠さんが美羽の事好きなのはずいぶん前から知ってましたよ?だけど…俺だって美羽の事本気で嫌いになった訳じゃない。」

「…うん、それ知ってる。だけど悲しみにくれてる彼女ほっとけるか?それが自分が好きな相手だったら尚の事だ。」

「それだって解ってますよ。」


男同志の言い分のぶつかり合いが食事中という事もあり多少静かであったものの、言葉の端橋では1歩も譲れない空気感が漂っていた。間に挟まれている美羽もまた、どう切り出していいか解らなかった。


「美羽は…どう思う?」


きた…!瞬時に美羽の頭の中でその言葉が浮かんだのも言うまでもなかった。カチャリと箸をおいて美羽は少し俯き加減で話をしだす。


「私は…本音を言えばすごく寂しかった。秋人が『別れよう』って言ったあの日。だけどそんな寂しい気持ちの時に匠さんが居てくれたのもすごく嬉しかった。匠さんが前にも好きだって言ってくれてた事もあって、甘えたらいけないって解っていたのに、それなのに自分の事好きでいてくれる人なら少し甘えても大丈夫かなって…思ってた。あの日から、一杯匠さんの事好きになろうって思って…今ではね?本当に匠さんの事…私好きですよ。」


そう言い終わる時には美羽の視線は宮村にまっすぐ向けられていた。しかしその直後に秋人の方に視線をやる。


「だけど、あんなひどい事、ひどい仕打ちされたのに秋人の事も、やっぱりまだ好きなの。私が一番優柔不断なんだよね…楽な方、大事にしてくれる方に、ちょうど良く手を差し出してくれた方に行っちゃってた。2人とも好きだから、2人ともとお付き合いしましょうなんて出来ないもん。秋人にしても、匠さんにしても、どちらにもひどい事してるのと同じ事だもん」

「美羽…」

「だから、今回最後に…私の我儘聞いて下さい。」

「なに?」


秋人と宮村の声がきれいに重なった。少し間を開けて美羽はゆっくりと切り出した。


「私、どちらとも付き合う事はやめます。秋人に対しては今まで通りのマネージャーとして、匠さんに対してはそれも今まで通り社長と社員として…そんな付き合い方したいです。でも、いつまでもそんな事してたらいけないから…だから自分の気持ち整理するのに時間を下さい…今度のクリスマス。来月まで待ってもらえませんか?それでちゃんと答えだして、その出した相手が、まだ私の事好きでいてくれたなら、その時また改めて私から付き合って下さいって伝えようって…ダメですか?」


我儘も承地の上だった。本来ならばこんな我儘通用するとも思えなかった。しかし秋人も宮村もその美羽の言い分を、申し出をしっかりと受け止めた。しかし、宮村から提案があった。


「美羽?でも、クリスマスは…やめよう?」

「…え?」

「突然クリスマスにごめんなさいを言われたらそれはそれでショックでかいぞ?」

「クス…確かにそうだな…」


秋人とも意見は一致した。そのことを聞いて美羽は『じゃぁ23日に…』と日にちを変えた。それなら…と2人揃って承諾してくれた。


「それじゃぁ今まで通り…俺は美羽とマネージャーで…」

「俺は社員同士で…ってかそれじゃぁ秋人のが一緒に居る時間多いだろ」

「仕方ないっすね…」


そう言いながらひとまず3人は食事を済ませてそれぞれの車でそれぞれの家路に着いた。自宅に着いてから美羽は宮村にメールを入れる。


『今日はごちそうさまでした。それと本当にごめんなさい』

『いえいえ、てか、誤らなくていい。美羽が秋人の事本気で忘れられないのだって承知してたし。それにあの時言ってくれたの嬉しかったし。ありがとう、お休み』


そうして宮村からの返事も読み終えて美羽はシャワーを浴びに浴室に向かった。この日はそのまま休むことにしたものの、なかなか寝付けずに遅くまで起きていることとなってしまったが、気付けば朝日で目を覚ますことになった。

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