第12話オトナな、コドモ
宮村に即決で反対を言われた秋人。現状ではすべてがうまく行かないでいた。
「ッチ…なんなんだよ…」
そんな時だった。携帯が鳴る。
「はい…」
『秋人?あのねぇ?』
「さつきか…また後にしてくれ」
『移動中?』
「そうなる」
そんな短い会話の後、プツリと電話を切った秋人。その数分後にまた着信があった。運転席のハンドルから着信を取ると、呆れたのと、少し苛立ち気味に秋人は電話に出た。
「いい加減にしてくれ。また後でこっちからかけるから待ってろ!」
『秋人?誰と勘違いしてるかわかんねぇけどさ?もしかして運転中か?』
「…ハルか?悪い…」
『いやいいさ。荒立ってるところ悪いんだけど、ちょっと食事付き合って?』
「…で、なんで俺な訳?」
『たまにはいいだろ、30分後にいつもの所な!』
そう言ってプツリと電話は切れた。『いつもの所』と言うのは良くS4のメンバーが話をしたり、食事をするのに使う個室のお店だった。食事はカジュアルな物から本格和食まで取り揃えている。価格帯もある程度リーズナブルなところなのだ。秋人自身も今いる所からであれば車で15分もあれば着く位の場所に居た。
「たく…」
そう呟きながらも秋人はその店に向かう事に。着くと入口でばったりと冬木と出くわした。
「あれ…和もここでか?偶然なのな…」
「何言ってんの?一緒に4人で飯食おうって呼ばれたろ?」
「いや、俺はハルから食事付き合えってさっき電話貰って…」
「そっか。大会議だって話だけど?」
「俺聞いてねぇよ?」
そう言いながら店内に入って行く2人。店員も見知った顔の為、深くは問わずに個室にすんなりと通してくれた。そこにはもう、春崎が到着している。
「よ、お待たせ」
「おう、悪いな、まだ海が来てない」
「そか、いいさ。時期に来るだろ?」
「だと思う。」
「ってかハル?俺大会議なんて聞いてねぇよ?」
「食事って言った方がすんなり来るだろ?」
「…ハメられた…」
「なんか言ったか?」
「いや…別に」
そんな時だ、平良も揃い、食事も注文しながら話を始める。
「早速なんだけど…秋人?聞きたい事があるんだけど?」
「んー?」
「早川さつき。今どういう関係?」
「…ハル?」
「答えろ。」
その口調から、冗談で聞いているものとも思えないでいた秋人。こういう口調の時にはある程度の情報等は春崎自身の中である程度の聞く根拠等は揃っているのだ。
「どうって…言われても…」
「OK、じゃぁ聞き方変える。美羽ちゃんとはうまくいってんの?」
「うまくも何もタレントとマネージャーって関係なだけだ。それ以上でも以下でもねぇだろ」
「特別な間柄…だったろ?」
「ハル?」
「もっというか?恋人関係だったろ。それでいて早川さつきと噂立ってるってどういうことだ?」
「ハル?…もう少し穏やかに聞いたら?」
そういう冬木の声に耳を貸すこともしないまま春崎はじっと秋人の答えを待っていた。
「ハァ…まいったな…」
「秋人?」
「…俺だって好きで美羽と別れた訳じゃねぇよ…」
「秋人…?」
「仕方ねぇだろ…別れた振りでもしなきゃ…気持ちが冷めた振りしなくちゃ…やってらんねぇよ!」
一気に気持ちが大きくなった秋人。そんな事は珍しい訳でもない為、他のメンバーは黙って聞いていた。その口火を切ったのは他の誰かでもなく、冬木だった。
「秋人、ちょっと落ち着けな?ハル、なんでそんな事聞いたの?」
「俺がこの間一緒になったモデルの子にね、聞いたんだよ。まぁその子の為にも念のため名前は伏せるけど…」
小さく笑いながらも春崎は話を続ける。
「最近良く早川さんからメールが来るんだと。その内容がどうやら秋人との事が多いらしくてね。転送してもらったって言ってたんだよ。それを見せてもらった。」
「へぇ。それで?」
「よりが戻ったとか、極秘で付き合ってるとか…そういった内容だった。だけど秋人は美羽ちゃんとの関係があるだろ?だとしたらおかしいと思ってね。それに加えてスタッフの意見、聞いてみた。早川さんは生き生きしてるけど秋人はやつれてくって。なんかの因果、あるだろ。」
そう春崎が話している間に、冬木はいろいろと連絡を取り出していた。少しすると、着信が入る。メールだったものの、冬木はその携帯をテーブルの上に置いた。
「これ。今来た」
「何々?」
『早川さつきさん?まぁ、あざといわね。てか秋人喰いって良く言われてる。秋人君に関しては本当にしつこいみたいだから心配してるんだけどね?』
「…さて、喰われかけてるかもしれないだろうけど、どうする?こうやって表には出てなくても皆気付いてる。秋人、どうするつもり?」
「………」
「でもさ、さっきの話だとあっきーが悪い訳じゃないじゃん?どうするったって…」
「秋人。」
春崎の言葉で平良始め、皆の言葉が遮られた。その後に春崎はゆっくりと話し出した。
「秋人を責めるわけでもない。てか、攻めるつもりなんて毛頭ない。ただ、秋人が自分で選んだ相手であるなら何にも言わないけど今回は違うんだろう?何か理由があって、秋人も、美羽ちゃんも、しんどい思いやつらい気持ちを抱えているなら取り去りたいだけ。おせっかいだなんていわれなくても解ってる。ただ、僕の考えや気持ちに海と和は賛同してくれた。それでいて、秋人に今日、本心を聞きたくて連れ出した。」
「俺は…俺が好きなのは美羽だよ。だけど、美羽が持ってきた仕事。ホテルの撮影での共演がきっかけでさつきにまた悪い火が入った。離れたくないと…自分には俺だけだって。関係ないっていたよ。俺にはもう大事にしたい人が居るって。それはさつきじゃないって…その時はさつきも身を引いた。だけど、着拒かけても、何をどうしてもあいつの執拗な行動が美羽に行きそうになった。それが怖かった。さつきに『別れた振り』は通用しない。あいつの性格からして言った事は実行に移すだろう…それで美羽が本当に俺の前から姿を消すなんてことになったら…それ考えた方が俺は息が止まりそうになんだよ…守ってやればいい…そういうけど…守れば守るほど…どんどん美羽が危険になるくらいなら…俺が離れたらそれでいい。」
「……美羽ちゃんは?彼女はどうなる…彼女の気持ちは…」
「クス…和ならいうと思ったよ。美羽には嫌われる。恨まれたっていい。それで匠さんとの距離が縮まって、うまくいけば…それでいい…」
「匠さん…って……社長?」
「あぁ。匠さんは匠さんで美羽に本気だし。浮いた話も今では全然ないし…俺よりは…よほどいい恋が出来ると思うから…」
「…だったらさ?秋人?…なんで泣いてんのさ…」
そう問うたのは平良だった。秋人の目からはスーッと一筋涙があふれ出していた。
嫌なんだよ…本当は…美羽と一緒にずっといたい…
他の誰かなんて…いっそこれから先の未来…
誰も望まないから……・・・・美羽だけは…離したくない…
そんな感情が露わとなった。それを見て春崎はテーブルの上に置いていた携帯を徐にとり、耳に受話口を当てるとゆっくりとした口調で話しだした。
「…だそうですよ。…社長」
その言葉で平良と冬木はぎょっとした面持ちで春崎を見た。秋人はそれどころじゃない様子だったが、そんな秋人に春崎は携帯を寄越してきた。
「ほら、電話。」
「電話って…」
「匠さん」
その春崎のひと言で秋人の胸はドクンと高鳴った。さっきまで言いたい放題言って、美羽との距離を取ろうとしていたにも関わらず、本当は離れたくないなんて…どの面下げて言えるのだろう…そんな事が頭を過っていた。
「もしもし…秋人です…」
『……』
「た…くみさん…?」
『…ハァ…お前は馬鹿か、秋人。』
「ッ……」
『なんでもっと早くに言ってこなかった?』
「…それは…」
『理由は解った。それならこちらも相手側に、それなりの対処は打たせてもらう。それとは別に、今度、秋人とは話をしないとな。』
「話…ですか?」
『あぁ、仕事の話ではないから。無論、今のマネージャーから変えるつもりも一切ない。』
「それじゃぁ一体…」
『単なる男同志の話だよ。…この意味、分かるよな?』
そういうと春崎に携帯を返して、宮村と秋人の会話は終わる。時期に春崎との会話も終了し、食事に精を出した。
「でもさ、秋人の元カノ悪く言うつもりはないけど、相当あざといな」
「…確かにな」
「僕なら疎遠決定コースの女だな。まぁ美羽ちゃんは別だけど。」
「タイプなん?」
「いんや?そうじゃない。相手にどうこうとかじゃないけど、なんか純粋に相手の事一生懸命になってて、かわいい。」
「そっか。」
「でも…匠さんと恋敵かぁ……アッキー、どんまい!!」
「何言ってんの…」
「まさか匠さんと張り合う気か?」
「今度話し合おうって言われたけど…」
「…絶対負けるな」
「僕もそう思う」
「もしくはいったん保留とか?」
「海のそれいちばんあり得るかも!」
くすくすと笑いながら、食事は進む。そんな時、カチャっと秋人は箸を置いた。
「秋人?どうした?」
「……ごめんな?迷惑かけて…」
「いいって事よ。それに迷惑なんて思ってないし!」
「そうそう!!決着ついたらそれこそ何倍にもして返してもらうし!!」
「…マジか…海のそれ一番怖ぇわ……」
そうして最後には笑みも戻った状態で食事も終えた。
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