第16話

「ええい、そんな言い訳など聞きとうない。すぐにこの者を牢屋に放り込むのじゃ」

 激怒した王様の命令でピエールは地下の牢屋に投獄されてしまいました。

 誕生日の次の日、王様は大広間の贈り物の山の前にたたずみ、腕組みをしていました。

 なぜかあの貧しい身なりの青年の口にした言葉が栗のイガのように胸に引っかかってなりませんでした。決心をした王様は、ピエールを牢から出して、もう一度話を聞いてみることにしました。

「もう一度たずねる。市民はそれほど苦しんでおるのか? 嘘ではないであろうな」

「はい、そのようなことはけっして」

 ひざまづいていたピエールは、顔を上げて王様の顔をしっかりと見ていいました。

「よしわかった」

 王様はそう返事をすると、王様とわからないように変装をし、侍従と護衛兵をふたり引き連れて城下に向かいました。

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