第17話

 王様がご城下に降りられるのは10年ぶりのことになります。王様が激しく舞う土煙を払うようにしながら町を視察していると、

「あの若者は何をしているのじゃ」

 怪訝な顔で王様はピエールにたずねます。

「若者は坂の上に住む老人のために、親切に荷物を運んでやっているのです。収入のない老人たちには坂の下の家賃の高い場所にはとても住むことができないのです」

「ふむ」

 そしてしばらく歩いてふたたびたずねます。

「あそこで、みんなして道にしゃがんでおるが、何をしておるのじゃ」

「あれは、ご城下を掃除している連中です」

「掃除とな」

「はい、やはり彼らも貧しいのは同じです。でもご城下が汚れているということは、私どもの王様のお顔が汚れているのと同じことです。ですからみんなで交代に町をきれいにしているのでございます」

「ふむ」

 王様は、半日かけてピエールという若者と一緒に城下を巡り、国民が我が王のために一生懸命ちからを注いでくれていることに胸を打たれたのでした。

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