第15話

 ピエールは白い大理石のテーブルに、持って来た布袋をそっと置きました。侍従がその布袋を王様のもとへ持っていくと、王様はあまりにもまずしい布袋に怪訝な顔をしたあと、袋の紐をほどいて中を覗き込みました。

「これはどういうことだ。余はこの国の国王であるぞ。そのほうは余をバカにするつもりか!」

 王様は大きな声で怒りつけました。それもそのはずで、みすぼらしい袋の中はからっぽで、何も入ってなかったのです。

「いえ、王様、けっしてそのようなことはございません。王様には何も入ってないように見えるかもしれませんが、ここには『心』という市民の気持ちが溢れるほど入っております。人びとは王様に贈り物を差し上げたいのですが、あまりにも生活が貧しくて、その日食べる物にも困っている状態です。それでも王様の誕生日ということで、何か贈り物をと考えたのですが、なかなか高価な品物を手に入れることができず、みんなで相談した結果の贈り物でございます。どうかお許し下さい」

 ピエールはどうしても王様にいまの国民の生活ぶりを知ってもらいたかったのです。

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