第13話

次の日、ウサギは畑仕事の帰り道昨日ネズミが曲がった切り株へ寄り道してみることにしました。


 ここを左に曲がってどこへ行ったのだろう、ウサギはそう思いながらネズミが行ったほうへ歩いてみました。


 しばらく行くと草むらにネズミに渡したちょうちんが落ちているではありませんか。


 ところが、あたりを見回してもネズミがいる気配などありません。


 あきらめて帰ろうとしたそのとき、助けを呼ぶ小さな声が聞こえました。


 その声は近くの穴の中から聞こえてきました。おそるおそるその穴をのぞき込むと、昨日のネズミが水のたまった穴の底で溺れかけて助けを呼んでいたのです。


 あわててウサギはそばにあった木のつるを穴の中へ投げ入れました。ネズミは木のつるをよじ登ってやっとのことで穴から出ることが出来ました。


「ウサギさん、助けてくれてどうもありがとう」


 ネズミはふかぶかと頭を下げ丁寧にお礼をいいました。


「よかったねえ、ちょうちんの灯りのおかげだね」ウサギは微笑みながらいいました。


 それからのネズミは、命を助けてくれたウサギへの恩返しのつもりで畑仕事を手伝ったり、いばらの家を修理したりして冬が来る前まで老ウサギと一緒に暮らしました。


                ( 了 )

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る