第12話

 ネズミはしめたと思い、次の日も次の日も老ウサギを手伝うこともせず家の中でぶらぶら、ゴロゴロとすごしました。


 そして、四日目の昼過ぎにそろそろあきてきたのか、やっと旅を続ける決心をしました。


 その日の夜、旅じたくをしているネズミを見ていいました。「こんな夜中に出ていくのかい、気を付けてゆきなよ。そうそうこれを持っていきな、夜道はぶっそうだから」


 ウサギがさし出した物を見ると、細い木の枝の先に糸がぶら下がり、糸のはしには小さなホタルが黄色い灯りを放ちながらつかまっていました。


 ホタルのちょうちんです。

 

 たいそう明るいものでした。


「ウサギさん、町へ行くにはどうやって行ったらいいんだい」と道をたずねます。


 ウサギは家の前に出て「この道をしばらく行くと大きな切り株があるから、そこを右に曲がって山を下ったところが町だよ」


 ネズミはちょうちんを手にすると、今までのお礼もいわずにその場を立ち去りました。


 老ウサギはそんなことを気にもかけず、点いたり消えたりするちょうちんの灯りを追うように見送っていました。


 するとどうでしょう、切り株のあたりで右ではなく左に曲がって行くではありませんか。


 ウサギは心配になって追いかけようと思ったのですがなにぶんこの時間です。それにネズミのほうが足が速いことがわかっているので仕方なくあきらめることにしました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る