第7話 空とぶネズミたち
ある春の夜のこと。
農家の納屋の屋根裏で、ひと切れのチーズを囲みながら9匹のネズミたちが相談をはじめました。
それは、最近この家の周りに住みついた1匹の野良猫についてでした。
「このままだと、そのうち俺たちみんなあの薄汚い猫に食べられてしまうぞ」
と、1匹のネズミが言いました。
「猫とケンカをしても勝ち目はない。このおいしいチーズが食べられなくなるのは残念だがいっそのこと引越しをしようじゃないか」
するとほかのネズミたちが驚いた顔で、口々に「どこへ引越すんだい?」と、たずねました。
「この農家の向こうの、そのまた向こうの森はどうだろう?」
「そこは安心して暮らせる場所なのかい?」
「それは行ってみないとわからない。そこで考えたんだが、オイラ明日の朝早く、その森へ行ってみようと思うんだ」
「君ひとりでかい?」
「そうさ、オイラひとりで行く。あまり大勢で行くと危険だからな。 まあ、まかせとけよ」
次の朝早く、まだ薄暗いうちから一匹のネズミは森をめざして出かけました。
農家の囲いをくぐり抜けると、そこにはどこまでもつづいているイモの葉でできた真っ暗なトンネルがつづいていました。
一生懸命走っているうちに気がつくと、イモの葉っぱの間から見える三角の空がいつしか白くなっていました。
春の香りいっぱいの野菜たちは夜露をしっかり抱いたままでまだ眠っています。
畑を抜けると、こんどはピンク色の花がじゅうたんのようにしきつめられた牧場がどこまでもどこまでも広がっていました。
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