第6話

「ここに一緒に住みたいってこと?」


「はい、お願いします。わたしはお月さんを見てるとなぜか心が休まるのです。これはわたしだけでなく、誰でもお月さんを見てると心が優しくなれると思います。

わたしのほかにも、きっとたくさんの人がお月さんを見て優しい心になっているに違いありません。そこで、より多くの人に心優しくなってもらいたい……そんな気持でいっぱいなんです」


 自分の気持をすべて話したうさぎは、もう一度深く頭を下げます。


「うさぎさんがどうしてもそうしたいっていうんなら、私はかまわないけどね」


 お月さんはうさぎの熱意に負けました。


「本当ですか? やったあ」ウサギは、嬉しくてぴょんぴょん跳ね回ります。


「これ、これ」


 お月さんは、うさぎのあまりの興奮する姿に愕いているようです。


「それがキビもちをこしらえるウスと杵ですか?」


 うさぎは左のほうを指差してたずねます。


「そうよ、それでぺったんぺったんとお餅をつくの」


「お月さん、ここにいられるお礼に、わたしがキビもちをこしらえます」


 お月さんの許しをもらったうさぎは、みんなに美しいお月さんが見てもらいたく

て必死でもちをつきました。


 そしてその後も月にとどまって、キビ団子を作りつづけました。 


               ( 了 )

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