第4話
激しい水の音がしたと同時にうさぎは目を瞑ってしまいました。そしてそっと目を開けてみると、そこは水の中ではなく、黒い闇の中にオレンジ色の渦がいくつもできていて、それがずんずん奥のほう進んで行きます。
長いトンネルを抜け出し、恐るおそるあたりを見回すと、意外なことにそこはすべてが黄金色にかがやく広大な場所で、地面はやわらかなお餅でできていて、気持いいぐらいプワプワしていました。
「ここまでは気の遠くなるくらい長かったでしょ?」
頭のすぐ上で声がしました。
「ここがいつもお月さんのいる場所なんですよね」
うさぎは、いま夢にまで見た場所にいることが信じられませんでした。
「そうよ。ここがあなたの来たがっていた月よ。そして右の上に見えるのがあなたが先ほどまでいた地球という星」
お月さんにいわれて見上げると、そこには月とはまったく違った、愕くほど大きくて青い色の星が紙風船のようにぽっかりと浮かんでいたのです。
「お月さんはこんな広い場所にひとりで暮らしてるんですか?」
「そうよ」
「淋しくないです?」
うさぎは信じられないといった顔で聞きます。
「たまにはそういうときもあるわ。でも、誰にも気を使わなくていいといった気楽さもあるわ」
「そうなんだ」
「ところでうさぎさん、あなたお腹は空いてない?」
「そういえば夕方から何も口にしてませんでした」
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