第3話

「どうしても行きたいというのなら来てもいいけど、私のところまではとても遠いわよ? それでもいい?」


「いいです。わたしはどうしてもお月さんのところに行ってみたいんです。でもどうしたら行くことができるのでしょう?」


「わかったわ。そんなにこっちに来たいというのなら、ひとつだけ方法があるわ。それは、あなたがいま話をしている池に映った私の顔に向かって思い切り飛び込むことよ」


「ええッ!」


 うさぎは何度も首を横に振ります。


「こちらに来るには、それしかないの。もしそれができないようなら、残念ながらこちらに来ることはあきらめなさい」


「いえ、どうしてもそっちに行ってみたいです」


 これまで一度も水の中に入ったことがないうさぎは、心臓が耳のところまで来ているくらい鼓動が激しく鳴っています。でもお月さんのいうとおりにしないと向こうに行くことができないうさぎは、意を決して水面の月に向かって飛び込む決心をしました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る