ヒザカックン
俺、山村 十一のクラス、二年二組ではヒザカックンが大流行している。俺もその流行に乗っかった一人だ。
「よっ、竹山。ヒザカックゥーン!!」
「あーっ、やりやがったなー!」
ヒザカックンは授業中でも止むことはない。それどころか先生まで参加している。
「えー、もともとヒザカックンというのは…」
「イェーイ先生、ヒザカックーン!」
「どわー!」
いやもうこれ学級崩壊レベルだろ。だがもう時すでにおすし。
「ピザカックーン!」
秋元がピザを友人の膝にぶつけた。その友人は「おぅわっ!?」と言って、持っていたスマートフォンを落とした。
「あー!」
スマホ…「E PhoneX」はバッキバキだ。保護フィルムもカバーもつけていなかったらしく、もうとにかくバッキバキだ。
「おおお、俺のE PhoneXがァ!」
「ごめんね、田中…お詫びに、これ…」
秋元はピザを差し出した。普通だったら「いらねぇ」と言うところだが、馬鹿な友人、田中はそれを受け取る。
「そもそもこの学校スマホ持ってきちゃいけないし理由があって持ってきたとしても先生に預けて放課後にならないと返してもらえないルールなんだよそんなことも知らないの?
そういう君みたいな人間が世の中を悪くするんだよせめてそこぐらいは考えろよそんなこともできなくなってしまったの君は?」
それは早口の棒読みすぎて逆に殺気を感じる言い方だ秋元。
「はい…すみません…」
いや田中、お前もそれで納得するんかい。仮にも君は秋元にスマホを壊されているのだぞ。
「ゆるしてアゲヨウ」
謝るのは君だろ。
はぁ、疲れた。
『三番線にまもなく電車が参りまぁース!』
俺は駅のホームに立っていた。もう嫌な予感しかしない。ほら。丁度電車が来るタイミングで秋元が…
「ヒザカックーン!」
「あっ」
やりやがった、秋元。俺の体はどんどんレールに近づいていく。………膝がレールについた、まさにその時…!!
「なんだこの光はぁ!?」
俺の膝とレールの境から真っ白い光が!何が…何が起きたんだ!?
「あぁ。鏡。」
その光は、単に落ちていた鏡に反射した日光だった。
…不可解現象に、少しでも期待した俺が馬鹿だった…
『バン』
「こ、ここは?」
「病院です。いやぁ。よかったですね。電車に撥ねられたにもかかわらず左足の骨折だけで済んだのですから。」
「俺は生きてるのか。」
「ヒザカックンをした秋元くんは、現在殺人未遂の容疑で警察に取り調べを受けていますよ。」
「まじか…」
この後も、ヒザカックンによる事故が絶えなかったため、西暦二○△△年、「ヒザカックン禁止法」が発令された…
短編の集まり きのこ @mushroomdayo
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