第25話 解決への道のり

「「夏輝!お前はどれだけ親に迷惑をかければ気が済むんだ!それに何人目だ!?あれほどよせと言ったのに親の言うことが聞けないと言うのか!!!!!……クッ………その件はこちらでなんとかしておく!お前は一切動くな!わかったな!」」


国保の顔色が一気に青ざめた。一緒に来た弁護士も弁解のしようがなくなっていた。


「これはあなたが息子の国保夏輝と電話で会話している時の音声です。あなたの秘書であった石田且馬さんが俺たちに託してくれました。」透明な袋に入ったSDカードを古来が国保の目の前に掲げる。


「…あいつめ…裏切りおって!恩をあだで返すとは!!!」先ほどの冷静さが嘘だったかのように怒り狂った国保が叫ぶ。


「何が裏切りだ!何が恩だ!先に石田且馬や結城羽月さんを裏切ったのはお前と国保夏輝の方だろうが!!石田さんは最後までお前らを守ろうとしてたよ。どんなにひどい仕打ちを受けてもどんなに罵られても家族であり、兄弟だからって!!親も親なら子も子だな!石田且馬と結城羽月さんは実の兄である夏輝と一緒にいるよりも本当の兄弟に見えるほど仲が良かったそうじゃないか。…そんな石田にお前の息子である夏輝は自分の立場を守るため平気で結城さんを殴れと命令した。どれだけ辛かったか胸の中をえぐられるような思いだったかお前らにわかるのか!!」今までクールに振る舞っていた古来が初めて感情をあらわにした瞬間だった。


「国保玄樹、あなたを逮捕します。それに息子の国保夏輝にも当分の間いてもらいますよ。」城戸が優しさと企みの混じった笑みを国保に投げかけた後、植村の前にスクッと立ちふさがった。


「…………な、なんだ」震えた声で植村が城戸に問いかける。


「あっ、そうだ!先ほどの音声データと帳簿ですが、許可を得てマスコミに流れるように手配して置きました。覚悟しといた方がいいかもしれませんね。」と言いながら城戸が不適に笑う。


『誰よりもあの人が一番怖いかもな…』と3人は目を合わせてつぶやいた。


それから国保夏輝は殺人、傷害、麻薬取締法違反などの罪に問われて逮捕された。父親の国保玄樹は犯人隠避、賄賂罪などの罪に問われて逮捕されることになった。犯人隠避に関わっていた警察関係者は懲戒免職に追い込まれ、植村部長は自主退職するという結果になった。


石田且馬も罪を認めて懸命に償おうとしている。

「石田、面会だ。」警察官が石田の前に立った。自分にはもう家族はいないはずなのにという疑問を残して警察官に連れられるままその場所に向かった。


石田の目に映ったのは結城羽月の恋人の麻生の姿だ。戸惑うような気持ちで席につく。「初めまして。石田さん…羽月からお話は聞いていました。」小さな声が部屋の中に響く。


「そうですか。」まともに顔を見ることができず言葉がうまく出て来ない。


「羽月と石田さんって本当に仲が良かったんですね。本当の兄弟みたいに。羽月が言ってましたよ。


『俺が一人で寂しい時とか悩んでいる時いっつも且馬兄さんが助けてくれたんだ。本当に優しくて憧れの存在だよ。今でも…またあの頃に戻りたいな』


そう言ってました。今日はこれを見せようと思って…」そういいながら3人が映っている写真を石田に見せる。「正直、私はあなたたちが許せません。いくら逆らえなかったとはいえ、無抵抗な羽月を傷つけて死に至らしめた。でも………羽月がいつも話していた時の石田さんには感謝しています。あなたのことを話す時の且馬の笑顔はいつもキラキラしてたから。」麻生は涙を流しながら石田に語りかけた。


石田もこらえていた涙が滝のようになって溢れ出る。「ごめんなさい。俺が弱かったんだ。本当に申し訳ありませんでした。ごめん、ごめん、ごめんよ。羽月…」そう言いながらごめんの3文字を何度も繰り返した。


__________________翌日___


「なんかすごく悲しくて切ない事件でした。みなさんはこういう事件1つ1つと向き合ってるんですね。」久海は雑誌を見ながらため息まじりに話す。


「そうですね。事件が起こるたびに切なくて悔しくて複雑な感情を抱く時もあれば、胸が押しつぶされそうになる時もあります。でも1つでも多くの事件を防いで犯人を捕まえて罪を償わせることが銃を持たず、素手で戦う僕たちの使命です。」城戸がこうつぶやく。


「俺たちが頑張ることで悲しい事件が1つでも無くなって1つでも解決することが大切だ。事件はこれ1つじゃないからな。また新しい事件が起こる。俺たちは常に警察としての志しを持って進まなくちゃ行けないんだ。」古来が城戸のあとに続く。



「そうですよね。1つでも多くの事件を解決して1つでも多くの事件を防ぐことが俺たちの使命ですもんね!」久海は何かが吹っ切れたような気持ちで再び席に着いた。






_______tululululu tulululululu


「はい!特別機動捜査隊99班」城戸が電話を取る。


「了解しました。すぐに向かいます!…みんな事件現場に向かってください」

城戸が全員に声をかけた。「「「はい!!!」」」


「誰も傷つけず解決しましょう!」城戸が改めてみんなに力を入れた。



「はい!いってきます」古来が大きく力強く返事をする。


こうしてまた久海たちの1日が始まろうとしていた。

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