第22話 負けられない戦い
「「「「わーーーー!!!!!」」」大きな声がバーの中に響く。
鈴道の方にも構わず男たちが向かってくる。そんな男性陣に動じることなくどんどん倒しながら交わして行く。ある者は正面から向かってくるが、攻撃を交わしながら横から蹴りが炸裂した。鈍い音と同時に男は倒れる。
女であろうと容赦しないような様子で、後ろからも拳は飛んで来た。それさえも軽いフットワークで交わし、飛び上がりながら強烈な跳び蹴りがヒットした。実は鈴道は幼い頃からテコンドーをやっていて、今もトレーニングを続けている。頭も切れてブ武道にも長けているすごい女性だ。
そうとは知らずに鈴道に向かって行く男性陣を軽いフットワークで次々と倒して行った。
違う場所では、古来も大勢の男を相手にしながらどんどん倒していた。古来の方にもたくさんの男が向かってくるが、冷静な判断と空手で培って来た精神で打ちのめして行った。中には、鉄パイプを持って向かって来る奴もいたが、腕で受け止めてすかさず腹に拳をついた。
「ゲホっ」という鈍い声がその場に消えて行く。古来の空手の腕は黒帯で警察の道場でも多くの人を相手にトレーニングを欠かさずにいた。さらに、まるでナイフのような突き刺さる蹴りがすごいスピードで次々と男たちの腹、顔、腰にヒットしていた。
久海も負けてはいなかった。店内のカウンター、イスなどを上手く使って縦横無尽に駆け回る。男たちの蹴りや拳も難なく交わしてどんどん前に進んで行った。それはまるで現代の忍者のような雰囲気を感じさせた。久海の華麗な動きに男たちもついていけないでいる。
「お前は先に進め!ここは俺らに任せろ!」
「絶対国保夏輝を捕まえて下さい!」
二人の声がバーの中いっぱいに広がった。その声を聞いて久海は、大きく親指を立ててVIPルームへと足を踏み入れる。そこには、5人の人物がいた。
「おりゃー!」と向かってくる男を上手く交わして左右に大きく動きながらどんどん倒して行く。
「ふー」っと一息ついて久海は夏輝の前に立ちふさがった。
「やるね。刑事さん。名前何だっけ?」と夏輝が久海に話しかけた。
「久海だ。久海桜風。」名前だけをシンプルに伝えると続けて話し始める。
「何で連続通り魔事件なんか起こした?無差別に襲ってたんだろう?」
「あー、つまんかかったからかな」と平気な表情で答える。
「つまんなかったから…だと…」久海が低い声で繰り返す。
「ゲームだよ。一度殴って息絶えなかったら勝ちってな。すげぇスリリングだろ」
笑いながら答える夏輝に久海の怒りが爆発した。
「てめぇふざんけなよ!人の命何だと思ってるんだ!!挙げ句の果てには、自分の大切な家族にまで手をかけた!」久海が羽月の写真を突きつける。「これは石田がやったんだよ。殺しちまったけどな。」と余裕げな表情で言い放った。
「いや!これはお前がやったんだ!一度目に殴ったのは確かに石田且馬だった。でも、二度目の一撃が致命傷になってるんだよ!お前は左利きだろ?傷の角度が一度目と二度目で違うんだよ!それにお前がこの店で薬の取引をしてる現場写真もある」
「…………薬はそうだったとしても、俺の殺しをやったっていう証拠がないだろ?あったとしても関係ないけどな!」まだ自信ありげな夏輝に久海は次の証拠を突きつける。
「石田が全部話してくれたよ。連続通り魔の主犯がお前で、メンバーがこの4人だってことをな!そして、自分が最初に結城羽月を殴ったけど、殺すことができず、お前が留めをさしたってことも、全部だ!」
「そいつの言うことなんか誰が信用するんだ。あいつなんかより俺の方が信頼も財力もあるんだ。」
「クソ!まだまだ余裕って顔だな」久海は怒りを押し殺すように夏輝に話しかける。
「もう終わりか?」これ以上ないだろと言いたげな表情で久海の手を祓う。「………………」黙り込んでいる久海の表情を覗き込みながら「話は終わりだ。じゃあな。」とドアの方へ向かう夏輝の腕を久海がグッと掴む。
「誰が終わりだって言った?まだだよ。」久海は何かを企んでいるような口元でにっこりと笑って見せたのだ。
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