第19話 家族を思う心
一方、古来と久海は聞き込みを続けて
国保夏輝が数週間前にも来ていたというバーを見つけた。
まだ夕方ということもあり辺りは静まり返っていて
どこか不気味な雰囲気を醸し出していた。
薄暗い階段を少し下りて行くとCLOSEという立て札が立っている。
古来が先頭に立って真っ黒のドアをゆっくりと開けた。
中に入るとまだ準備中のようで掃除道具や色々なものが散らかった状態になっていた。
中からアルバイトのような男が2人の姿に気付いて出てくる。
「すいません。まだ準備中なんですが…」
古来は警察手帳を開いて見せ「聞きたいことがあるんですが、この人見たことある?」と尋ねた。
アルバイトの男はハッとしたような表情になり「あー、国保夏輝さんですね。お一人で来たり4、5人で来ている姿を見かけたことがありますよ。ちょっと前も2人で来てVIPルームに入って行く姿をみました…」
「佐々木くん!」アルバイトの男性の名前を呼ぶ男性の声が奥から聞こえた。
「もうそこはいいからこっちの掃除もお願い出来るか?」アルバイトの男をその場から遠ざけるように呼び寄せる男の姿があった。
「警察の人ですよね?何か御用ですか?」冷めたような口調で2人の前に立ちふさがった。
「失礼ですが、あなたは?」久海がその男に尋ねる。
「俺はこのバーの店長で山本です。国保夏輝さんはご贔屓にしてもらっていますが、
ただのお客様です。個室を好まれるので来られた時は、奥のVIPルームにお通しします。ただそれだけですよ。」と饒舌な口調で2人に話した。
「そうですか、誰と一緒に来ているかなんてわかりませんか?この中にいたりしませんかね?」古来は、インスタの写真を何枚か見せる。
1つの写真を見た時に山本の表情がやや曇った感覚を受けた。久海はその表情を見逃さなかった。「…いいえ、いませんね」やや焦ったような声色で答えた。
「そうですか、ありがとうございました。またお伺いに来ることがあるかと思いますが、その時はまた宜しくお願いします。それでは失礼します。」と丁寧に挨拶を交わしてバーを後にした。
ドアを出ると2人は急に不適な笑みを浮かべた。
「古来さん、ここですね。山本っていう男も何か知っているようでしたし…」
「だな、このバーがあいつらの溜まり場のようだ。」自信に溢れた表情と口調で言い放った。
「ひとまず署に戻ってまとめよう。鈴道からもさっきメールで新証拠が見つかったっていう報告があった。その話も聞きたいからな。」古来はそう言って足早に車へと向かって行った。久海の心にもどこか確信に近づいているような予感がしていた。
_______tulululu tulululu tulululu…カチャ
「夏輝か?」山本は古来と久海が帰ってすぐに夏輝に電話をしていた。
「どうした?警察でも来たか?」夏輝は何かを察したように質問を投げかける。
「どうしてそれが…そうだ。夏輝について聞きに来たよ。一応ごまかしておいたけど…」とやや不安げな口調で話す。「そんな簡単な2人じゃないと思うけどな…心配するな。バレたらバレた時だ。」
電話ごしであったとしても山本の頭の中には余裕のある夏輝の表情が簡単に想像出来た。
署では4人が集まって今まで調べて来たことを報告し合う会議が開かれようとしていた。
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