第17話 屈しない正義の心

署に戻った古来と久海は、改めて事件の経緯や証拠などをまとめてみることにした。


「今ある証拠をまとめてみよう。まずは、被害者である結城羽月さんの部屋で見つけた1枚の写真と麻生さんが見せてくれた中学時代の写真、そして、ぬいぐるみの背中に隠されていたSDカードと重なるような2つの異なった傷口…」古来がホワイトボードを使いながら改めて集まっている証拠を並べてみる。


「犯人は、国保玄樹の長男である国保夏輝だってことは明白なのに…あいつを追いつめる証拠が足りないですよね?」と久海が悔しそうな口調で頭を掻きむしる。


「このSDカードももう一度洗ってみたけど前に確認した以外の証拠は、見つからなくて…国保夏輝の薬物に関する取引については裁けても今回の連続通り魔事件を立証するには、証拠が薄いと思います。何か決定的な証拠を集める必要がありますね。」と鈴道も久海の意見に同意した。


「犯人はすぐ目の前にいるというのに…」城戸も悔しい表情を見せて唇を噛み締める。



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そこへ突然、電話の音が鳴り響いた。城戸が受話器を取る。


「はい、特別捜査機動班の城戸です。…それってどういうことですか?ちょ、ちょっと!!」一方的に用件だけを告げられて切られてしまったような雰囲気で城戸は呆然としていた。


「どうしたんですか?」古来がすかさず城戸に尋ねる。


「………さっき植村部長から電話があって今すぐこの事件か手を引けということでした。」


「ちょっと!どういうことですか!?」久海は立ち上がって大きな声を上げる。

「僕もよくはわかりませんが、国保玄樹から植村部長のところに電話があったということではないでしょうか?」深刻な表情で城戸が語った。


「俺は納得いきません。捜査を辞める気も国保玄樹なんていう悪徳社長の脅しに屈するつもりはありません!前も言いましたけど、悪を野放しにしておくくらいなら警察官になった意味がないので!」久海は強い口調で城戸へ詰め寄った。


「久海くん!」城戸が大きな声を上げて言葉を封じるように話し始めた。


「誰が捜査を辞めるといいましたか?責任は僕が取ります。僕も悪を野放しにしておくくらいなら警察官になった意味がないという思いは同じです。このまま捜査を続行してください!!」物腰の柔らかい印象とは打って変わって力強い口調で言い切った。


「「「はい!」」」3人が声を揃えて返事をする。


「とりあえず、古来くんと久海くんは国保夏輝と結城羽月が会ったというバーに行ってみて下さい。そこがやつらのたまり場になっている可能性もあります。鈴道くんは、坂本さんや先生のところへ行って他に気になったことがないか改めて証拠を洗い直してみて下さい。僕は、国保玄樹と植村部長の関係を洗ってみます。」古来、久海、鈴道のそれぞれに指示を出す城戸。


「「「はい!」」」3人は返事をすると共に3人の目には、城戸の姿がどこか違って見えた。まるで本物の警察官としての正義を見たような感じがしたのだ。


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