第14話 最初の一歩
「ちょっと待ってくださいよ!!!!」朝から署内に大きな声が響く。声の張本人は、久海だ。「上からの命令で連続通り魔事件はこれ以上調べないことになりました。」城戸は悔しそうに話す。
久海は怒りの感情を隠せないでいた。「納得できません!3人に怪我させて1人の命を奪って…それも大切な家族の命を奪って、今ものうのうと何もなかったかのように生きているなんて許せるわけないですよ!!」
「俺も納得できません。」古来は、静かな闘志と怒りを滲ませた。
「国保貿易の社長である国保玄樹は、さまざまな業界に顔がきく大物です。財界、警察、ありとあらゆる世界と繋がっています。それほど手強い相手です。下手をすれば自分たちが潰されるかもしれません。」と戒めるように久海や古来に対して言葉を伝える。
「人の命を奪ったヤツが目の前にいるのにそいつを野放しにするくらいだったら、辞めた方がマシです!」と久海は立ち上がり飛び出す。
「どこ行くんだ!?」古来が肩を掴む。「国保玄樹に話を聞いてくる。俺は1人になっても何があってもこの事件の犯人を取っ捕まえる!殺された結城さんや麻生さんのために…」久海は悔しい思いと怒りが滲む言葉で古来に言った。
「俺も一緒に行く」古来も久海と一緒に部屋を飛び出して行った。
「……やれやれ、こうなるとは思ってましたが…。」城戸は、苦笑いを浮かべながらコーヒーを一口すする。鈴道は、まったくというような呆れた表情で笑っていた。
-------------国保貿易-----------------------------------------------------------------
大都会の中に空から地上を見下すように立ちはだかる大きなビルが国保貿易だ。
「でっけぇ〜」久海の口から思わず本音が漏れた。
「行くぞ」古来は、ただ一言だけ言って入口に向かって小走りに足を進めた。
久海は、一歩出遅れたが小走りで追いついて古来の後に続く。
全面ガラスでできた大きな入口の前に立った。一歩前に進むと自動ドアが大きく開いて奥の方に受付らしきカウンターが見える。久海と古来は、迷わずそこへ向かう。
「突然すいません。こういう者ですが、社長の国保玄樹さんに面会したいのですが…。」と古来が受付の女性に尋ねる。
「恐れ入りますが、お約束はされていますでしょうか?」受付の女性が優しい口調でこう続ける。「いえ、お伝えしたいことがありまして突然来たもので…」と古来が返すと「大変申し訳ございません。アポイントのないお客様との面会は、お断りさせて頂いております。それに加えて、社長は今から会議が入っておりまして、お会いすることはできません。恐れ入りますが、日を改めてお越し頂けませんでしょうか?」と丁寧な口調で返答した次の瞬間、「申し訳ない。こっちも緊急でお伝えしたいこととお伺いしたいことがあるんです。仕事よりも会議よりも重要なことです。」と古来は冷静に返答した。
どれくらいその状況が続いただろうか…遠くの方からこちらに向かってくる1人の男を見つけた。コツコツコツコツという足音と共に古来と久海の法に歩いて来て、目の前で足を止めた。
「警視庁特別捜査機動隊の古来朝陽さん、そして…あなたは?」とその男は、久海に尋ねた。「俺は、新しく特別捜査機動隊に異動してきた久海と申します。あなたは?」久海は仕返しのように男に質問を投げかけた。
「ご挨拶が遅れました。初めまして、私は石田且馬(いしだ かつま)と申しまして、社長である国保の秘書をしております。社長がお会いになるとおしゃっております。着いて来て頂けますか?」とスラッと背の高い整った顔の男は、2人にこう伝えた。
「……えー」と古来が答える。久海は、石田を見た瞬間何か気付いたことがあったのだろう、ずっと複雑な表情を浮かべていた。
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