第12話 明らかになる真実

「「ただいま、戻りました!!」」古来と久海の声が部署いっぱいに響いた。


「おかえりなさい!早速で悪いんですが、会議始めましょうか。」と城戸がみんなを1つの場所に集める。鈴道が事件の概要をまとめたホワイトボードをガラガラと押しながら持って来た。


「それでは、連続通り魔傷害殺人事件の中間報告をしてもらいます。まず始めは、久海くんからお願いしてもいいですか?」と城戸は久海を指名する。


「はい!!」久海は立ち上がり前に置かれたホワイトボードの前に立って報告を始めた。


「僕は、先ほど4件目の被害者である結城羽月さんの解剖を担当された笹原さんに話を聞いてきました。やはり事件の資料通り、遺体には頭に2回強打された跡がありました。そして、2回目に殴られた傷が致命傷となり、死亡に至っています。この傷が2回殴られたとわかった根拠としては、傷口の角度だそうです。1回目に殴った時は、右利きの人物が殴っているのですが、2回目の時は、左利きの人物が殴っている可能性が高いということです。先生曰く、1回目に殴って倒れたところを2回で留めをさすために殴ったのではないかとの見解でした。以上です。」と笹原から聞いたことを事細かく報告した。


「次は俺が報告します。」と古来が席から立ち上がって久海と変わる。


「俺は、先ほど聞き込みの最中に被害者結城羽月さんの恋人である麻生水琴さんから連絡を頂いて久海と合流し、話を聞いてきました。彼女は、被害者から1枚の写真を受け取っています。これなんですが…結城さんの部屋で発見した写真と写っている人物は一緒なのですが、やや時間が経過しているように思えます。麻生さんの話によると、真ん中に写っているのは被害者の結城羽月さんで、この左に写っている野球のグローブを持った人物は、結城さんの実の兄、右に写っているのが、結城さんとは血は繋がっていませんが、この家で働いていた家政婦さんの息子さんらしく、いつも3人で仲良く遊んでいたとのことでした。結城さんは、何らかの理由で父親との縁を切り、家を飛び出して母方の性になったそうです。実は、麻生さんがこの右側の人物の名前を結城さんから聞いていました。名前は、国保夏輝。国保貿易の社長の長男です。」と古来は、鋭い表情で言い切った。


「…………」城戸が腕を組んで絶句していた。そんなただならぬ空気を久海は感じ取っていた。「国保夏輝は、国保貿易社長の国保玄樹の息子だ。そして、次男がこの前の事件の被害者である結城羽月さん。結城さんは、何らかの理由から国保の名前を名乗らずに母親の性である結城を名乗っている。国保玄樹は、政界とも繋がっていて、実は警察からもマークされているという噂もある。その息子である国保夏輝のことなんですが、少し調べてみました。」城戸が立ち上がり説明を続ける。


「国保夏輝35歳、大学卒業後は、レストランのオーナーになって経営者として活躍しているそうです。見た目ルックスと御坊ちゃまというところから女性にとてもモテたそうだ。この夏輝も父親同様、さまざまな噂が飛び交っています。麻薬にカジノ、汚職などが主なものです。調べたらどんどん埃が出てきそうな人物ですね。」と優しい口調でさらっときついことを言って退けた。


「その国保玄樹という人物ですが…」SDカードの中身を調べていた鈴道が画面上に資料を映し出しながら話す。


「このSDカードの中身を詳しく調べてみたところ、怪しい帳簿を大量に見つけました。完全に汚職の匂いがプンプンします。そして、さっき坂本さんが見つけてくれた写真に写ってたこの男性なんですが、国保夏輝の写真と比べたところ…一致しました!同一人物です。」と自信を持って言い放った。


すると急に立ち上がったようなガタンという音がした。驚いて音の方を顔を向けると写真を見ていた久海がハッと何かに気付いたように立ち上がっていた。


「久海どうした?」と古来が尋ねると「あの、これ見て下さい」と言いながらある部分を指差す。


「…まさか!!!」古来の中にも衝撃が走ったようだった。


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