第11話 3人の写真

「この前彼の部屋で見せてもらった3人の男の子の写真あったじゃないですか?この3人と似てるなと思って…」と切り出す。古来は、写真を手に取ると「確かに似てますね。」と言いながらじっと見つめた。


「この写真はどうしたんですか?」と久海が質問を投げかけた。

「いつだったか忘れてしまったんですが、この写真羽月にもらったんです。中学生入った時の写真だそうですごく大事そうに見つめてたから、どうしたの?って聞いたんです。そしたら…


『この写真中学生くらいの時に撮った写真なんだ。俺の兄貴たち、兄貴とは年齢が8歳離れてるんだけど、めっちゃ優しくて良い兄貴…だったんだよな。それでこっちも俺の兄貴なんだけど血は繋がってないんだ。家に住んでた住み込みの家政婦さんの息子さん。一番背が高くて女子にすげぇモテてたなぁ』


ちょっと悲しそうなさびしそうな顔で話してくれました。そしたら突然、この写真やるよって私にくれて…」と何かを思い出したように涙を我慢しているようだった。


「そうなんですね。あともう1つ…結城さんのお兄さんたちの名前って知ってたりしますか?」と申し訳なさそうに尋ねた。


「はい、一人だけ知ってます。名前は、この人野球のユニホームを着てグローブを持っている人が確か…国保夏輝(くにほ なつき)さんだったような気がします。」と言った瞬間、古来の表情が強ばったように見えた。




「国保夏輝ってもしかして…ちょっと、すいません。」と言いながら古来は、レオ田尾wppってカフェの外に飛び出していった。



何分たっただろうか…程なくして古来は、ゆっくりと戻って来た。すると「ありがとうございました。とても参考になりました。犯人は、絶対逮捕します。」と力強い言葉を残して、久海に「いくぞ」と声をかけ、2人はその場を立った。


麻生さんの「宜しくお願いします。」という言葉を背中に受けながら古来と久海はカフェを出た。


「古来さん、どうしたんですか?急に飛び出して…」近くのパーキングに止めていた車に向かう途中、久海が疑問をぶつける。「とりあえず、車に乗ってから話す」とやや早歩きで車に向かった。


ドアをバンバンと閉め、古来が話を切り出す。「あの写真に写ってた3人いただろう?あの内の1人に国保夏輝いたの覚えてるか?」「はい、左側に写ってた人ですよね?野球のユニホーム来てグローブを持っていた…」


「さっき班長に連絡して少し調べてもらったんだ。あの国保夏輝という人物は、大手企業である国保貿易の社長国保玄樹(くにほ はるき)の長男だ。さらに詳しく調べてみる必要はあるが、国保玄樹は、政界にも顔が効くという話もある。これはただの「連続通り魔事件」で終わらなそうだ。」と力を込めて久海に伝えた。


「国保夏輝…か…実は、監察医の笹原先生に被害者の傷について話を聞きにいったところ、2回目殴られた時の傷が致命傷になったとのことでした。そして、傷口の角度から1回目に殴ったヤツは、右利きなんですが、2回目に殴ったヤツは左利きだということがわかったんです。」と古来に話した。


「これは、一旦署に戻ってわかったことを共有してから、改めて事件を整理する必要がありそうだな。班長には、戻ること連絡しておいたから一旦署に戻るぞ!」古来の運転する車は、署に向かって車を発進させた。





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