第10話 何かが始まる予感…
そんな余韻に浸っている間もなく久海が言葉を切り出す。
「検視結果の資料見たんですけど、2回殴られたってどういうことですか?何でそんなことがわかるんですか?」久海は、ストレートに笹原に尋ねた。
「傷口を見てみるとわかるんだが、たぶん一度殴られて倒れたところに留めを指すためにもう一度殴られたという可能性が高いんだ。この最後の一撃が死因だろうな。」と語る。
コーヒーでも飲むかと笹原はコーヒーの入ったカップを久海に差し出す。
「ありがとう…でも、これってどう違うの?」写真を指差しながら久海は、コーヒーをすする。
笹原は軽い笑みを浮かべて「よく気付いたな。そうなんだよ。一度目の傷口は右利きのヤツが殴ってるんだが、致命傷となった二度めの傷口は左利きの人間が殴ってるんだ。同じ場所を目がけて殴ったんだろうが、微妙に角度がズレてるんだよ。」と真剣な表情に変わった。
「そうなんだ。」と真剣に聞く久海の表情を見た笹原は、「お前もついに刑事の仲間入りか。久々に見たよ。そんな真剣な表情。」と子供の成長を喜ぶ父親のような顔で久海に言葉をかける。
「何急に!?」驚いたような様子で久海はまた一口飲もうとしたコーヒーを吹き出しそうになっていた。
tulululu…tulululu…
久海の電話の着信音が室内に響いた。
「はい。久海です。あー古来さん、どうしました?何かわかりましたか?」どうやら電話の主は、再度聞き込みに出ている古来のようだ。
しかし、話が進むに連れて久海の表情はまた真剣なものに変わった。
「了解しました。すぐ合流します!!」慌てて電話を切って立ち上がり、「ありがとう」と言って久海は部屋を後にした。走りながら城戸に電話を入れる。「城戸班長、久海です。さっき古来さんから連絡がありました。被害者の恋人である麻生さんから電話が入って思い出したことがあるから会いたいとのことでした。俺も古来さんと合流して一緒に話を聞こうと思うんですが、いいですか?」久海は伺うように城戸に報告した。
「えー宜しく頼みます。」城戸の返事はとても早くシンプルなものだった。早速、久海は被害者である結城羽月の恋人である麻生と待ち合わせてしているというカフェへ向かった。
小走りでカフェに向かうと古来と麻生はすでに到着していた。カフェのドアを開いてカウンターでカフェラテを注文して席に着く。「すいません。お待たせしてしまって…」息を切らしながら久海が言うと「いいえ、お忙しいところ急にすいません。」と逆に謝られた。
その謙虚な姿を見た久海は、『本当に結城さんと麻生さんはお似合いのカップルだったんだろう』と改めて思った。しかし、そんな思いに浸ってる時間はない。単刀直入に古来が切り出した。
「突然で申し訳ありませんが、思い出したことがあるから連絡したって言ってましたけど、何を思い出したんですか?」古来が尋ねると写真を1枚机の上に置いた。それは被害者の結城さんの部屋で見つけた写真と似ているが、シチュエーションが違う写真だった。
それもそうだ結城さんの部屋で見た写真よりも少し成長した3人が写っていた。すると、麻生が何かを話し始めようとした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます