第8話 新しい手がかりと捜査

すると突然久海がおもむろに話し始めた。


「3件は、傷害事件なのに今回は、殺人。3件は、被害者の身元が分かる物がそのままなのに、今回は、ないに等しい。明らかに通り魔の連続傷害事件としてまとめられる事案でないですね。まだ何か裏がありそうな予感がします。」と言いながら考え込む久海を見て、3人はただじっと見ていた。


するとドアの向こうから少しずつこっちへ向かうような足音が近づいて来た。


------------------コンコン


ドアを叩く音がしたと同時にドアが少し開いた。「ちょっといいですか?」

それは、現場で見た鑑識さんだった。


「あっ、お疲れ様です。坂本さん、どうしました?」

と、班長が声をかけた。すると、鑑識の坂本は手に何かを持ちながらゆっくり部屋の中に入って来た。


「実は、さっき被害者の自宅で彼が見つけたぬいぐるみの背中にこんなものが…」

そういいながらビニール袋に入ったSDカードを見せてくれた。


「コレって…」「SDカードです。」「中身は?」とテンポ良く掛け合うように話が進む。すると鑑識の坂本はパソコンを取り出し、その周りに、城戸、古来、久海、鈴道も集まった。


SDカードをセットしてパソコンを開く、カードの中身を開いて唖然とした。


「これって取材資料と取材内容、そして何かの帳簿?」久海が食い入るように見ていた後ろの方で城戸がつぶやいた。「もしかして汚職の証拠か?」一瞬にして部屋の空気が変わった。


「その他にももう1つ…こちらは写真なんですが。」とクリックしたファイルには、薄暗いバーのような場所で数人の男女が写っていた。その中のある男と男が小さな白い粉の袋と金を交換しているところが写真に収められていた。


「麻薬の密売だね…これは」城戸があきれたようにぼそりとつぶやく。「他の取材資料や内容はノートに収められていたのにこれだけSDカードに保管されていた。しかも、隠すようにぬいぐるみの背中に埋めるなんて相当大事な情報だったんだろうな。それともそれくらい大きな情報だったのか…?」鈴道が真剣な口調で語った。


「被害者の結城さんは…これが原因で殺されたのか…」久海の悔しさと怒りの混じった声色が部屋の中に強く重く響き渡った。


「まだ確定はできないが、おそらくな…」古来も悔しそうな声色で続けた。

まるで一人一人の心がグッと固まったような空気感へと変わっていく。



「この資料コピーさせてもらってもいいですか?」鈴道が鑑識の坂本に尋ねた。

「えー、どうぞ」と坂本がSDカードを手袋をした鈴道に渡す。


自分の席で資料を見ていた久海がその資料を立ち上がった。被害者の死因が書いてあるページを開いてこう話し始める。


「後頭部を殴られた亡くなったのが死因のようなんですけど、見て下さい。2回殴られてるんです。」と死因の部分を指を指す。そこには、一度殴られたことが原因で亡くなったわけではなく、二度めに殴られたことが原因で亡くなったと記されていた。


久海は立ち上がり「今までの3件の通り魔事件は、一発殴られただけでしたよね?明らかに殺意があったとしか思えない状況じゃないですか?」と続けた。


「そうだな、さらに詳しく調べる必要がありそうですね。」と城戸が一言言葉を発したと同時に何かひらめいたような雰囲気で久海がこう言った。「あの!もしかして殴られた傷口ってどんな風になってたか詳しく知ることってできますか?」と質問を投げかけた。


少し考えてから「じゃぁ、監察医の先生に直に話聞きに行ってみる?」と坂本が提案する。久海は「はいっ」とうなずいた。


班長がすかさず支持を出す。古来は、もう一度被害者の身辺を洗うこと。鈴道は、SDカードに入っていたデータの解析。久海は、監察医の先生のところに行って話しを聞いて来ること。


各自、昨日初めて事件の知らせ聞いた時とは、全く違う面持ちでそれぞれの捜査に向かった。

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