たびガール 桜の東京編

第24話 桜の東京編1 桜の名所へ

「まもなく、池袋、池袋です」

まだ通勤ラッシュも始まっていない早朝。まだ眠気の取れない井町 茉莉いまち まりは国立昭和記念公園を目指して電車に乗っていた。

車窓からはいつのまにか芽吹いてきた緑が見える。前に旅に出た時は枝に葉のついていない木が多かったのを思い出しつつ、春の始まりを実感するような景色をただぼんやりと眺めていた。

「次は、新宿、新宿です」

昭和記念公園は立川にある。つまりは次の新宿で乗り換えなければならないのだが……。

「そもそも、『国立』なんて付いている公園が早朝から空いてるのかな」

そんな疑問が、乗り換えの準備をする間に頭が冴えてきた茉莉の脳裏をよぎった。

すぐさまスマホで開園時間を調べる。

「あと3時間はある……」

そんなわけで茉莉は、昭和記念公園を後回しにして別の場所から回ることにした。

まずはここから近い場所から、徐々に立川に近づいていく。

そんなわけで、茉莉が最初に選んだ目的地は目黒川だった。昼頃には人でいっぱいになってしまうと聞いていたので、混雑を極力避けたい茉莉なりの判断である。

東急東横線が通っていて、中目黒にも行くことができる渋谷駅……に降りずにそのまま電車に乗り続ける。

茉莉はその次の駅、恵比寿駅で電車から降りた。

ここから日比谷線に乗り換えて、中目黒駅を目指す。

茉莉が渋谷駅で乗り換えをするのを避けた形をとったのは、数年前東京へ行く用事があった時に新宿駅で迷ってしまった記憶があったからだ。それ以来、多少遠回りになる程度なら大きな駅での乗り換えは避けるようにしている。

日比谷線にすんなりと乗り換えた茉莉は、そのまますんなりと中目黒に到着した。

「地下鉄なのに終着駅はどっちも高架なんだ……」

そんな感想を漏らしつつ。ちなみに、日比谷線のもう一方の終着点は北千住駅である。

階段を降りると、お目当の風景が広がっていた。

川に沿って一面の桜が咲き誇っている。


すっかり暖かくなった春の日の今日。茉莉はお花見に来ていた。

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