第22話 秩父編5 階段つらい

旧秩父橋とその下を流れる荒川を堪能した後、結城たちは次の目的地を目指すことにした。が、結城たちの前には先ほど降りてきた坂と階段が立ちふさがった。すでに拓也は満身創痍気味である。

「もう……ここに住んでもいい気がしてきた」

「何言ってんだ、ゆっくりでいいから、がんばろうぜ」

「ゆっくり……か……」

「この階段上がって駅に着いたらジュースおごってやるよ」

「よし……結城、がんばろっか」

なかなかに安い男である。結城は拓也の将来がちょっとだけ不安になった。

とりあえず急な坂は結城が拓也の手を引っ張る形で一気に登った。あとは長々とつつく階段を上るだけである。

「ゆっくりでいいって……さっき結城言ったよね」

「ああ、無理して怪我してもよくないしな」

「じゃあさ……一時間に一段登ればいけるよね?」

「……それは日が暮れるからせめて十秒一段にしてくれ」

「えー……」

そう文句を言いながらも、拓也は階段を上り始めた。この時点でため息を三回ついている。大丈夫なのだろうかと結城は心配になったので、拓也の後ろについて、万が一落ちても大丈夫なようにした。

階段を登り切るのに十分はかかった。結城は少し介護の大変さがわかったような気がした。

橋を渡って来た側まで戻るとそこに自販機があったので、結城は自分に炭酸飲料を、約束通り拓也にはジュースを買った。

それぞれの飲み物を少し飲んだあと、二人は最寄りの

大野原駅へと歩き出した。

「雪……降らないといいね」

「そうだな」

「でも、降ったらそれはそれでいい景色が見れるかな」

「どっちがいいんだ……」

なんて下らない会話をしながらも、大野原駅には十数分で着いた。

秩父鉄道は単線で運行本数が少ないため、次の電車を二十分ほど待つことになった。

それぞれが持っていた飲み物を飲み終えたあたりで、三峰口行きの電車がホームにゆっくりと止まった。

電車内にはあまり人がいなかった。座りながら待つこと十三分。目的の浦山口駅に到着した。

「結城、ここには何があるの?」

「俺の行きたかった鍾乳洞がある、ちょっと歩くけどな」

「今日は結城の行きたいところに付き合うって決めてるし……全然いいよ」

「そうか、ありがとな」

改札を出て、二人は鍾乳洞を目指した。坂を下りてはまた登り、墓地を通り抜け、杉林の中を歩いた。杉林からは、川のせせらぎが聞こえてきた。どうやら近くに川が流れているらしい。

少々険しい道を進むと、ようやっと鍾乳洞の入口までたどり着いた。

「蕎麦屋があるみたいだし、鍾乳洞行ったらそこで昼ご飯にするか」

「そうだね……蕎麦なんて、久しぶりに食べるかも」

「腹は減ってるか?」

「減ってるような……減ってないような……」

「まあ、鍾乳洞入って体動かせば腹も空くだろ」

「空くといいね……」

そんな会話をしながらも、二人は料金を払ってから鍾乳洞に入っていった。

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