第20話 秩父編3 秩父神社

「秩父に着いたわけだけどさ……」

「ああ」

「今の秩父……0℃らしいよ」

「どうりで寒いわけだ」

「しかも雪の予報」

「……マジ?」

「ほんと」

そんな会話をしながら秩父駅を出て少し左に曲がり、まっすぐ行くと秩父神社の境内が見える……のだが、ここには入り口はないので、ぐるっと回ることになる。

途中でコンビニを見つけたので、結城と拓也はそれぞれお菓子と飲み物を買った。結城はチョコとラムネ、そしてスポーツドリンクを、拓也はせんべいと渋いお茶を買った。拓也はどこまでも渋かった。

そこからぐるっと大回りをすると、鳥居の向こうに境内と本殿が見えた。2人は一礼をして、境内に入った。

「ここは……結城が来たかったんだよね」

「そうそう。鶴ケ丘八幡宮寄ってから神社もいいなあって思って」

「鶴岡八幡宮かあ……」

「鳩いっぱいいたぞ」

「鳩か……いいなあ」

「食いつくのは神社じゃなくてそこか」

「鳩いいよね……」

茉莉が大量に鳩の写真を撮っていたのを思い出しながら、結城は境内を進んだ。あとでその鳩の写真を見せてもらおうと思いながら。

「手水の使い方、わかるか?」

「右手からだっけ?」

「逆だ」

「あー……」

そう言っているうちに、2人はお清めを終えて、再度本殿に向かった。

賽銭箱を前にして、結城は5円を、拓也は10円を入れた。

流石の拓也でも二拝二拍一拝は知っていたらしい。

結城は何をお祈りしようか迷った後、他愛もないことをお祈りした。

結城がお祈りを終えても、拓也はずっとお祈りをしたままだった。いったい何を思っているのかはさっぱりわからなかったが、なかなか大事そうなことだったので気を遣って何も聞かないことにした。

お祈りが終わった後、少し周辺を散策することにした。様々な装飾が施されていて、涼乃だったらここでテンションが上がっているのだろうな、などと思いながら見て回った。

散策もほどほどに済ますと、境内の外に「三峯神社」と書かれた祠があった。

「三峯神社って……秩父鉄道でもっと奥に行くとあるところだっけ……?」

「よく知ってたな。三峰口駅からさらにバスで行かないといけないし、そんな時間はないから今回は流石に行けないぞ」

「あーいや、行きたいとかじゃないんだけど……そんな場所もあったな……と思って」

「すごい良い雰囲気の場所だから、一回行ってみるといいぞ。」

「じゃあ、今度いこっか……」

「俺も行くこと前提なんだな……。とりあえず、今日はここでお参りしたってことにしておこう」

「そうだね……」

2人は小さな祠に向かって二拝二拍一拝した。ここでも、拓也はかなりの時間お祈りをしていた。それが済んでから、2人は橋へと向けて出発した。

「そういえば、寝てるときイヤホンしてたけど、何聞いてたんだ?」

拓也の口からは、今流行りのシンガーソングライターの名前が挙がった。こういうところでは意外と流行に乗っていることが多いのが拓也の面白いところでもあると、結城はそう思っている。

「みんな驚くんだよね……僕が流行りに乗ってると……」

と、拓也は少し困った顔で言っていたが。

結城はスマホのマップアプリを見た。どうやら、橋にはもう少しで到着するようだ。

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