湘南編

第2話 湘南編1 目覚め

朝の5時。枕元に置いておいた携帯がアラームを鳴らす。


眠たい目をこすって体を起こした少女、井町茉莉は最近新しくなった携帯のアラームを止め、大きくあくびをして、ベットから這い出た。


そのままおぼつかない足取りで部屋の入口まで行き、電気をつけ、あらかじめ用意しておいた服に着替え、昨日のうちに用意しておいた荷物の中身を確認して


「これでよし」


と家族に聞こえないように言った後、温かい布団を名残惜しそうに見てから部屋を出た。


玄関のカギを開け、外に出ると冷たい張り詰めた空気が茉莉を襲った。


今からでも布団に戻りたくなる気持ちを我慢しながら、茉莉は自転車に乗り込んだ。二軒隣にある家の車のライトが光って見えた。消し忘れだろうか。知らせるにも時間が時間なので放っておくことにした。


家から少し近くにあるコンビニに自転車を止め、朝食など必要なものを買い込んでからまた自転車を走らせた。街灯だけが光っていて、どこか非現実的な薄暗い街並みにゆっくりと自転車を走らせて、最寄りの大宮駅には5時30分に着いた。乗る予定の電車はあと20分後と、まだまだ時間はあったので、茉莉は早めの朝食を摂ることにした。


今朝のメニューはさっきコンビニで買ったバウムクーヘンと牛乳という、至極シンプルなもの。それでも、バウムクーヘンが好きで小食な茉莉にとってはごちそうだったし、お腹を満たすにもちょうどよかった。


そんなバウムクーヘンに舌鼓を打って少ししたら、6番線にシルバーの車体にグリーンとオレンジのラインが引かれた電車が滑り込んできた。行先表示には「小田原」と書かれている。普段通学に使っている見慣れた電車でも、早朝であまり人がいないからか、少し特別に見えた。


先頭車に乗り込んで、幸いにも誰も座っていないボックス席に座ることができた。茉莉は電車内で少し眠ろうと思っていたが、電車に乗っていた時にはすでに目がさえてしまっていたので、窓際に座って景色を眺めようとした。が、ほとんど真っ暗だったので、今日の予定を確認しながら今更なぜ自分がこの電車に乗っているのか思いを巡らせることにした。




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