第5話
優介からメールが入っていた。
『ごめん、迎えに行けなくなった』
きっと彼女と何かあったんだ。
いい事が。
私は分かったとだけ返しておいた。
真っ直ぐ帰るのも馬鹿らしくてコンビニの前の駅へ向かった。
ベンチに座ってチョコレートをつまみながら電車を待っている時だった。
「お姉さん」
顔を上げるとそこには高校生くらいの男子が立っていた。
あまりのイケメンぶりに思わず目を見開いてしまった。
「私ですか?」
「そう。それ、ください」
イケメン高校生は私の食べていたチョコレートを指さして言った。
「腐ってる……かもしれませんよ」
「は?」
なに馬鹿みたいな事言ってるんだろう、私。
「すみません。どうぞ」
私はイケメン高校生にチョコレートを両手で差し出した。
「全部なんて言ってませんよ。ひとつ、ください」
「ああ、はい」
私がチョコレートを1粒差し出すと青年は直接口で受け取った。
久しぶりに心臓が跳ねた。
「恋人が」
「はい?」
「恋人が死んだんです」
「……そう、ですか」
「はい。また、会えるといいですね。さよなら」
「……さよなら」
青年はちょうどやって来た電車に乗って去っていった。
またねと言いながらさよならを言われたのは初めてだ。
私は魂を抜かれたような感覚を覚え、駅を出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます