第3話 いろは

優介に彼女が出来てから、よく眠れなくなった。

それまではお互いしがみついて眠っていたけれど、優介は私に背を向けて眠るようになった。

それが寂しくて仕方ない。

今日も何時間も寝ていない。

だけど今日はパートだ。

行かなければ。

重い身体を起こして部屋を出た。

「おはよう」

もう仕事に行ったと思っていた優介がまだリビングにいた。

「おはよう。まだ会社行ってなかったんだ?」

「言ってなかったっけ?今日有給取ったんだよ」

「何かあるの?」

「有給消化しなきゃいけなくてさ。仕方なくね」

「そう」

「今日、パート何時までだっけ?」

そんな事聞くのはどうせ彼女と会うからだろう。

「どうして?」

「迎えに行こうかなって思ったんだけど、迷惑だった?」

「ううん。ありがとう。17時まで」

「分かった」

今日はどこでやるのだろう。

まさかこの部屋で?

私と優介のこの部屋で?

許さない。

そう思った途端、目眩がした。

「いろは?大丈夫?」

「触らないで」

「え?」

「あ……ごめん。何でもない。行ってくるね」

私は無理矢理笑った。

「うん……行ってらっしゃい」

優介は寂しそうに笑った。

そんな顔しないでよ。

あなたは加害者でしょ。

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