第14話 ゴブリンキングの憂鬱  後編

ダニーに頼んでたウーメン職人が来た。頑固そうだがうまそうに肉付きの良い体で、髭だらけの頭にタオルを鉢巻きのように巻いている男だ。もちろん、聞いたそうにするのが当然で!おびえてを見せる職人。

いかんぞ、そのままだと本当に食われかねん!

だが、ダニーがこの人がウーメン職人だと説明したらトロール達が御所望の食い物を作る人間だと気がついたらしくうなり声を上げながら職人を取り囲みガードされたら誰も近寄れずすごぐごと逃げ出しだした。


材料と手伝いはこちらで準備すると言ったのだが、それでは駄目だと言う。まず、トロールの大きさと人間の大きさの違いと職人としての誇りがそれでは叶えられないとのこと。

急遽二週間でトロールが持てる大きさのどんぶりを用意するとダニーが約束して、その間で満足のいく用意をお互いすることになった。


戻ってこなかった時は、人間の町が赤髭とトロール軍団に襲われちゃうかも知れんけどまぁ、それはそれだよね~別の意味で要望にこたえられるわけだからそうなったら放置かなぁ~?


もう一方の検案の、土地神様のお引越しの件だが、オーガクィーンのビシュヌがどこで見たかを確認しに山に登る。人が十人ほど寝れるような岩場に黒く苔むした丸い岩が二つ。

片方は上のほうが水がたまるぐらいに凹んでいる・・・そこで見たと言う。

明日から供物を持って現れるかどうか見てみなくちゃ。


一日目


大量の果物やら野菜やら魚やら肉を土地神様が何を好きなのかわからんので全部ゴブリン達に運ばせて、供えさせる。

供えたらここの作業に戻るように言う、後に残されたのは、わし、メアリー、ビシュヌそして山エルフだ。


なんでも、清めと召喚の為の儀式を含めた舞をビシュヌが奉納する。


う~む、体の線の浮き出るような薄衣で舞うのは~いろんなところが揺れて目のほよ・・・いや・・・・やはり、しりがでガボッ!!ビシュヌの舞いながらの後ろ回し蹴りが炸裂し地面に頭からめり込むわし・・・。


メアリーはすぐ来て大丈夫?とか聞いてくれたけど・・・山エルフはこっち向いてないしビシュヌの様子をじっと見ていた・・・動じないのかなぁ~。


今日はわしが痛い思いしただけで終わり。



二日目


今日もお供物を持たせてやってきたのだが、無い。昨日置いておいたのが全部なくなってる。ボアオーク共が食ったか?あとでせっかんだな。

今日はメアリーとわしだけ・・・半日ほどいるが、何も起きない。

帰りにボアオークにつまみ食いしたかを聞いたが・・・違うようだ。夜は檻に入ってるし、作業中ならと思ったのだけど・・・いつか、犯人探しをしようと思う。



三日目


今日は、わしとシロで山に来た。

メアリーは二日続けて山に登ったから筋肉痛だそうだ、全く体の弱いやつだ。

お供物はゴブリン達に持たせているが。

やっぱり前の日の分のお供物が無い。


まぁ、夕方までシロと話しをする。

最近の教会の状況やら花壇で花が咲いたとか、近所のコボルトの女が赤ちゃん6人産ん(それは多いってわしは思ったがこれが普通らしい)でちっさくてかわいいとか、まぁ、なごむ話しのオンパレードで飽きなかった。


今日も神様は出てこない。



四日目


ダニーとシロとわしで山に来た。


ダニーがシロをこねくり回してかまいすぎていて話しもできない・・・それどころか、シロ一歩も歩いていないぞ。


お供物は相変わらずなくなってる。


五日目


シロがかなり疲れているらしく今日はわし一人で待つことになった。


前の日のお供物は無い。

今日はわし一人なので、お供物泥棒を捕まえようと思っている。



夕方。

作業をやめるオーガ・トロール。帰り支度を始める。


ホブゴブリン・ゴブリン・コボルトはボアオークを檻に入れて鍵を閉めてそのまま集団で何かしゃべりながら帰路につく。


あれ?今ここにいるのは檻に入ったボアオークとわしだけか?


お供物は、まだそのまま・・・


わしはひざを抱えてごろごろしながら座っていた・・・時間はまだあるしね。

檻のどっかがあいててボアオークが食べに来てるんじゃないかと思ったがそれじゃないようだ。

よほど疲れていると見えていびきがここまで聞こえてくる。まぁ、じきにそれも遠くなり静かになってくるんだけど・・・・



月が出てくる青い月・・・わしは、前の戦いのことを思い出してゾッっとする。

やだなぁ~

やだなぁ~


また体のっとられたり・・・とか・・・とか。



なにもなく、寒々と時間だけ過ぎていく。


おや?あれは?なんだ?


上に凹みのある岩の上がなんか光ってる。


岩の少し上に紙のように浮かんでいる薄く円状で金色に光っている。


それはゆっくりと水面のように波立ち・・・泡が出て~パッシャンって金色に染まっているが透明で透けているガラス細工のような魚が円の中で飛び跳ねた。


おぉ~神様~!まさに神々しい~


その魚は水しぶきを上げて金色の水面に戻っていった。

しーん。


ん?終わり?


あれ?

お供物は~?

引越しの話しは~??



すると、水面に何かが現れた。

始めは頭だけ出して。

息をついて。

水面にちゃぽんと浮かんだのは丸い甲羅。

亀か?甲羅の表面は苔むしてて一部に小さな土筆がくっついてる。


この光ってるのって水じゃないのかな?

亀はヨイショヨイショって感じで水面の一部を凹みのない岩のほうに向かって一生懸命押している・・・・結構長いこと見ていたんだけど・・・まだ・・・・まだかな?・・・やっとついた。


なんとなくホッとする。


水面の一部がウニョーンッと押された形そのままに伸びて・・・もうひとつの岩にくっついた。

もう一回、首を上げて辺りを見回して~わしに気がついてるだろうに?もっさり、ゆっくり岩のほうにのっかって来た。


亀が日に当たるかのように、月に向かって背伸び。

そのあと、腹ばいになって全部の足を岩から離してまるで飛んでいるような格好をし始めそのまま、お供物のほうを見て口を開くわけでもないのにモクモクっと口を動かした。

すると、なんとなくお供物へってないか?


もしかして。

もしかして。

お供物泥棒!

じゃない!土地神様?


モクモクするのは終わってない、お供物は減っているのがわかるほどになった。


わしは土地神様かな?ビシュヌにちゃんとどんな姿なのか聞いておけばよかった・・・闇の月の王が人型だったし、魔神も人型で現れることが多いから・・・こっちは本体はグロかったりしてるけど・・・まぁ、細かいことは気にしない?きっと、土地神様だろう。


『えっと、土地神様。土地神様のお伺いをせず、勝手に岩山を削って申し訳ありませんでした。』

云々謝罪と作業の必要性と、お引越しのお願いを~してみたんだが、こっち見てモクモクしてるだけ・・・


あれだけあったお供物が一個も無くなって、ポチャンと金色に光る水面に土地神様が飛び込んで、金色の水面が消えた時。

わしは、思った。

しまった、意思の疎通が取れてない!!


わしは、山を急いで降り。

主要メンバーを呼び出した、もちろんビシュヌが来るまで話しをするのを待った。全員寝ていたところを起こしたので機嫌が凄く悪い。そんな中、山エルフだけはニコニコしてるなんでだろ?読めないなぁ~この人エルフ。


おきたことを話し、明日は出来るだけ全員参加の方向でと言ってわしは寝る。

ビシュヌは帰って寝るのかと思ったが戻るまで眠気が持たなかったのか話を聞き終わったと同時にここで崩れて寝た。

無理させたかな?



六日目


畑の近くの森で大型種の猪が群れでいるのが見られたそうだ。大型種をヒュージと呼ぶこともあるそうだがでっかい猪は調教すれば乗り物にも荷馬がわりにも武器にも食料にもなる。見かけ的には乗るなら大型主の狼のほうがいいが・・・今度どこかに捕りにいこう。


その猪を捕まえるようにゴブリンジェネラルに命令した。もちろん生け捕り希望だが、ウーメンになんでも骨や肉を使うと言うのでその手配のためにも使えそうなので相手次第で予定を変更してもいいよってことにしておいた。


ゴブリンジェネラルは嬉々として、部下に命令を出し始める。残った兵には、農作物の収穫とウーメンに使う材料の運び込みの手伝いをさせるように命令する。

まぁ、任せるよ。


今日は忙しくなりそうだから。



ビシュヌ、メアリー、シロ、山エルフ

そんで、わし


5人で山に・・・ダニーは、ウーメンの準備で忙しいみたいだ。

山に出発するシロをもみくちゃにして『エネルギー充填100%!!』とか言って、鼻血出しながら。『いってらっしゃい!こっちもがんばるですよ~』っと、手を振って送ってくれてた。


シロは、朝からぐったりしている・・・今は、メアリーに背おわれている。大変だなシロ~でも、お前のすっごく近くにお前のエネルギーとやらを奪おうとしてるやつがいる気がするんだが?


夕方ごろ山について夜まで待つ。


夜だ!月が出てる・・・


昨日と同じく、土地神様ウニョーンとモクモク。

お供物が減っていくのを見ながら・・・みんなが驚いているのを見て、なぜか誇らしい気分になりながら~

問題の意思の疎通の話しをビシュヌにする。

仰々しい態度や舞をしながら、ビシュヌが引越ししてくれるみたいです満腹になったらするって言ってますね。


おぉ、よかったで?どんだけ持ってくればいいの?


量は同じでいいから後一週間つづけろだそうです。


そういう、わしとビシュヌのやり取りを面白そうに見る山エルフ・・・・


一週間か~ちょうどウーメンの日と一緒なんて・・・

なんてウーメンなんだ~!いや、つまらなかったな。


とりあえず、一週間。毎日お供物を持っていくことになった。わしでなくてもいいようなものだが、途中で投げ出すのもなんだしね。

ビシュヌが時々なにやらお札やら奉納の舞だとかしてくれている。なんでも、機嫌をとるのと動く時にうまくいくようにとのそういう感じの呪いだそうだ。


最終日、今日はウーメンの日。

朝、山エルフが山に出かけていった。


わしの代わりに山に行ってくれるそうだ。そうだ、わし朝からいろいろ忙しいぞ。


前日から人間の職人達(結局20人も来た!全部弟子だとか言ってたよ。)と一緒に、大型種の猪をさばいたり骨を煮たりとかなんか、わしこき使われてる?

わし、ゴブリンキングよ。

朝はテーブルとか野外ステージの準備とか急がし~


ビシュヌと赤髭その郎党を迎え入れウーメン&宴の会を開くことにする。

ウーメンは、さすがにうまかった。

猪の肉を煮てタレに漬けそれをあぶったものがウーメンにのっている。トロールやオーガのメンと呼ばれる細長い物はわしらの食ってるものより太い・・・が、中が空洞になってるとかで煮るのは早くすむ為歯ごたえなどの問題は無いとのこと考えたな~あの職人・・・・

あっちも食ってみたい。


ウーメンのどんぶりが積み重なる中、職人の一人がここでウーメン屋やったら儲かりそうだなぁ~とか言ったら。師匠職人から、まずいって言われてお前が食われるのとどっちが早いかなぁ~なんて言われていたが・・・・ある意味あってるぞw



ウーメン祭りが終わってウーメンの余韻に浸りながら。

宴が開催された。

土地神様引っ越し祝い&山エルフが遊びに来たぞ記念だ。



盛り上がって、みんなが沈んだころ・・・雨が降ってきた・・・

雷が鳴り。豪雨に変わったころ。


よって轟沈していた者を引きずりながら皆、建物の中に。


わしは雨の中、山エルフが雨に打たれてるのを見た。

いつ帰ってきたんだろか?


山のほうをじっと見ている、山エルフ。


雷は近いのかかなり強い感じで・・・とか言ってるうちに、大きな地震?地響き?が・・・



住人たちは、じしん~と外に出て。あめ~かみなり~と家に入るを何度か繰り返していた。



山エルフに何見てるの?と聞いたら。

うむ、素晴らしい神渡りだね。


わしには雷と凄い雨しか見えないけどなぁ~



なかなかいいものを見せてもらったよ、それだけでも来た甲斐があるというものだ。


そう言い残して城のほうに戻っていった。



次の日、城の居間で寝こけていたビシュヌが部下に起こされていた何かあったらしく急いで外に飛び出していった・・・慌ててついていくオーガの皆さん。


赤髭はゆっくり起きて山のほうに向かって行った、岩山での作業に戻ったのだ。


ホブゴブリンやゴブリン・コボルトたちは昼まで寝ていた。二日酔いだね~


職人さん達に握手して、全員をみおくった後。



ビシュヌが戻ってきてワンワン泣いていた。

なんでも、岩山から霊峰に向かってでっかい池が出来ててそのひとつが、霊峰近くに建設中だった街・・・将来、城になる予定が・・・2割残して池になってたそうだ。




慰めて帰ってもらった後。


山エルフが、わしだけ呼んでこんな話しをしてくれた。


ビシュヌがしていた呪いと舞は、土地神様を操る為のものだったらしい。


今朝札を、はがして。呪いも解いてきたんだそうだ。

あの娘は、土地神様の表層意識としか話しをしていないとか。

「お人よしの友人が困ったことにならないか心配できた。」って、土地神様に伝えたとかいう話を聞かせてもらった。

土地神様は、そこの小さい緑の奴のことかと言ったらしいんだけど・・・山エルフはさぁどうでしょう?って答えたという。

どういう人なんだかわからないけど、とりあえず助かった良かった良かった。


ちなみに、土地神様は霊峰に引っ込んだ時。結界を張っちゃって、動物とかは大丈夫だったんだけど。

もともと山に住んでいたオーガの近縁種で毛むくじゃらの原始人っぽいサスカッチは外に追い出されちゃってその数200人がビシュヌに責任取れって大騒ぎしてるらしい。


かわいいそうだけど、神様を利用しようとした罰だよねきっと。



まぁいろいろあったけど、わしがお人よしかどうかは知らんが。

山エルフには助けられた。


山エルフは、あちこちに出来た池を観察してから自分の住んでいる山に帰っていった。

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