第8話 太平洋戦争の真実④

沖縄戦線の大敗により、四月には大日本帝国軍の敗色は、より色濃くなった。それ以前より敗色は決していたと言えるだろうが、さすがに本土上陸が、すぐ目と鼻の先まで来ているとなれば、もはや打つ手なしと言えた。

にも関わらず、当時の日本政府は足掻きを止めようとはしなかった。それは戦争を続ける為の作戦を企てたり決行したりと言った事ではなかった。日本政府は既に敗戦を覚悟しており、意外と知られてはいない真実なのだが、少しでも敗戦後の優位性を獲得する為に、かつて戦争に勝利し、思想の似ていたソ連を頼ったのだ。

しかしそれこそが日本政府の失策以外の何者でもなかった。何故ならば連合国軍における当時のソ連の立場と敵国アメリカとの関係について、日本政府は分析もせず知ろうともしないで仲介を推し進めようとしていたのである。

戦後に入り、米ソ間における東西冷戦が始まったが、実はこの時に既に冷戦の始まりの合図は告げられていたのだ。同じ連合国軍でありながら対日戦におけるソ連参戦を排除しようとするアメリカ。終戦後の国際的地位確立を目論もくろんで対日戦参戦のタイミングを図るソ連。その事がソ連の日本政府側の交渉を足踏みさせたのである。更にタイミングが悪い事に、時のルーズベルト大統領の急逝であった。穏健派のルーズベルト大統領に対して、新しく就いたトルーマン新大統領は、ソ連排除に積極的で、終戦を急いだ。早くに戦争を終わらせる事で、ソ連参戦を無きものにしようとしたのである。その為に、兼ねてより開発を進めていた新型爆弾、原子爆弾を、広島に投下するに踏み切ったのである。

つまりは米ソ間における主導権獲得争いの餌食えじきに我が国民が選ばれてしまったのだ。その代償は言うまでもなく、計り知れないものであり、たかだか一権力者のつまらない自己顕示欲が引き起こしたものなのである。その為に何十万もの尊い命を犠牲にしなければならなかったのか?つくづく人間の業の深さに驚嘆の声も出ないと私は思う。

更に悪い事に、新型爆弾の脅威に気付かない日本政府は、ポツダム宣言を受け入れる事に戸惑い、二発目の原子爆弾が長崎に落とされるに至ってしまった。

現在において最初で最後の被爆国となってしまった我が国日本。十三世紀半ばには蒙古襲来において世界で最初の火薬被害に合ったのも日本だと言われている。そんな我が国は、世界平和をこわ高だかに上げていく責務があると思うのである。そんな国において、"解決方法が戦争しかない" などと口が裂けても言ってはいけないのではないだろうか?ましてや国を代表する国会議員がである。

さて、次回は戦争は終わったものの、終わらない戦争。戦後の日本にスポットを当てたいと思う。読者諸君よ。今も戦後である事を踏まえて心して読んでいただきたい。

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