第3話 人類の進化と変遷

今回の話しは、太古の事象につき、確定されたものではなく、あくまでも有力説に基づいた上で私なりの考察を語って行くので、それを考慮の上でお読み頂きたいと思う。


人類の始祖はオーストラリア大陸で発見された "アウストラロピテクス" だと言われている。感の良い方は分かってもらえると思うが、命名の由来は、オーストラリア原人と言ったところだ。しかし研究が進むに連れて、アウストラロピテクスはアフリカ大陸で生まれた事が分かって来た。一体どう言った事なのかと言うと、人類誕生の時代には、オーストラリア大陸はアフリカ大陸と一繋がりであって、地殻変動により、現在の位置まで移動したと言うのが、ほぼ確実な説になっている。その為に、赤道以北の多くを占める、アフリカ大陸からユーラシア大陸に至る地球上の大半を占める陸地から遠く離れてしまったオセアニア諸島は、動植物が独自の進化を遂げた事は、有名な話しである。


さて、私が何故このような話しを始めたのかなのだが、これが前章で話した事に繋がるからである。

アフリカ大陸で誕生した人類の始祖は、自然界のピラミッド構図では、決して生き残る事が出来ない、非常に弱い存在であった。肉食動物はするどい牙と爪を持ち、多くの動物達は四足歩行であり、二足歩行に進化(退化?)した人類は、移動速度も他の動物と比べて、非常に遅かった。が為に、肉食動物に狙われると、その生命は終焉しゅうえんを迎える事にあらがえなかった訳である。にも関わらず、何故、人類は生き残り、発展して、現在のホモ・サピエンスにまで進化出来たのであろうか?私はそこにこそ、人が戦争をする元凶と、平和を成し遂げる本能が隠されていると思っている。


話しを戻そう。アフリカ大陸で誕生した人類の始祖は、敵から身を守る為、群れを作った。生きる事は食物を確保する事であり、自身が食物にされない事。その為に、人類は道具を作り、数百メートル離れた獲物を捕らえる事に成功した。速く走れなくとも、道具でそれをおぎなった訳である。そして獲物を捕らえる役目の者と、肉食獣から身を守る為の見張り役に分かれ、食物を確保しつつ、その身を守ったのである。肉食獣は速いもので時速100キロメートルものスピードで走れたが、100メートルもすれば、それ以上は走る事が出来なかった。それに対して、二足歩行を手に入れた人類は、せいぜい時速20キロメートルくらいのスピードでしか走れなかったが、長距離走行が可能だった。その為、早くに敵を見つける事が出来れば、逃げ延びる事が出来たのである。その為、見張り役さえいれば、猛獣の餌食えじきになる事をけられたのである。

しかし道具を生み出した者もいれば、方法を思い付かない者もいる。それをコミュニケーション能力を使って、伝達して行ったのだ。そこが他の動物との違いだった訳である。

やがて始祖達は、アフリカ大陸だけでは持て余すようになり、東西へと分かれて移動して行った。西方へ向かった者は、やがてクロマニョン人へと進化し、東方へ移動した者は、ホモ・サピエンスへと進化したのである。


頭の良い読者諸君はお気付きであろう。クロマニョン人はどこへ行ったのか?そう、滅んだのだ。クロマニョン人はホモ・サピエンスと比べて、身体能力が格段に優れていたと言われている。分かり易く言えば、ウサイン・ボルトよりも速く走り、マイク・パウエルよりも遠くに飛び、セルゲイ・ブブカよりも高く飛び、ブライアン・ショーよりも怪力だった訳だ。言わば二足歩行の猛獣だったのだ。

では何故、クロマニョン人は滅んだのだろうか。それはクロマニョン人は群れを作るには作ったのだが、それは家族親類単位での群れであり、他のクロマニョン人の群れさえも、自身らの縄張りをおかす敵とみなし、協力する事はなかったのである。しかもクロマニョン人が移動した西方、今で言うヨーロッパ辺りは、当時は極寒の地であり、防寒の必要もあった。屈強なクロマニョン人は、生き長らえる事が出来た者もあったが、極寒の地と言う事もあり、食物確保も難しかった。故に、クロマニョン人は滅びの一途を辿る事となったのだ。


一方で東方へ移動したホモ・サピエンスは、群れ同士が協力し合い、情報交換をし、海岸に行けば、貝などの海産物が採れる事も共有して行った。そうして文明を発達させ、遂には、海を越える方法までをも編み出して行ったのである。当時、大陸と陸続きであった台湾から、海を渡って現在の沖縄に渡る事が可能な事が立証されている。それがのちの琉球王朝へと繋がったのである。

一方で北側では、当時、陸続きであったシベリアから北海道へ移動した者もあった。それがアイヌ民族である。そこからどのように本州へ移動し、現在の日本人が生まれたのか、そのルーツは解明されていない。恐らくは海を越えた琉球人の事だ。そこから九州へ渡り、本州へと移動したのではないかとの説が有力とされている。


ここまで人類の変遷へんせんを述べて来た訳だが、本題となる人類が戦争へと向かう本質の部分に切り込もうと思う。ここまでの話しでは、クロマニョン人は協力をこばみ、時には争った為に滅んだとし、我々の始祖、ホモ・サピエンスは協力し合って、繁栄をしたように書いて来たが、本能の部分では、エゴと言うものが存在しており、自分達の生命をおびやかす存在は、淘汰とうたしようとする本質は残っているのだ。日本史だけ見ても、〜の乱や、〜の変、〜の改革など、内乱、内戦のたぐいは多く起こっており、世界にまで広げると、今現在をもってしても、戦争がない瞬間など存在しないほどに戦争は常に起こっていると言って良い。人には本能の部分で、自分(達)さえ良ければ良いのだ!と言うものが、潜在せんざい的にある事を忘れてはならない。


かの有名な芸術家、岡本 太郎氏は、大阪万博で作成した、太陽の塔の内部に、生命の進化を具現化ぐげんかした。微生物から始まり、魚類、両生類、爬虫はちゅう類と進んで、哺乳ほにゅう類が頂点に立つ。しかし、岡本先生は、進化の底辺を人類とした。微生物から哺乳類まで進化をげ、やがて人類と言う "退化" と言う終焉しゅうえんを迎えたと表現されたのだそうだ。

前に述べたように、エゴと言う人類しか持たないものが戦争を引き起こすのだ。人間はエゴを捨て去らない限り、地球生物上、最低の生き物になってしまう事を心にきざみ込みたいものだ。


次回は2章では描かなかった世界大戦に切り込み、戦争について、日本から見た、より具体的な話しをしようと思う。

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