第3話 その手があったか


「あははは、そうですか。手紙ねえ……く、くく、くくく、いや失礼」

「なあに、笑うのは当然ですよ。こんな35歳の男に、中1の女の子が『好きです』なんてラブレターを寄こすんだから。これで、『僕もそうです。』なんて返事でもしたら、それこそ犯罪ですよ」


講師控室では男性二人が大笑いしていた。


彼らは現役の高校教師。この進学教室でアルバイト講師として教えていた。


同じ控室で授業の準備をしていた由香里は、いたたまれず、その部屋を飛び出した。


(あのバカは35歳、相手はと中1の女の子、22も違うのよ!

 私は40歳、一之瀬君は21、19しか違わないじゃない……)


しかし、洗面台の鏡に映る顔を見れば、どう見てもババア。色恋なんか語ったら、物笑いの種にされてしまう。


「ねえ、ジムに行っているの」

「えっ、結果にコミット?」

「バカ、あんなに高いところじゃないわよ」


笑いながら20代の教務室の職員がトイレに入って来たが、由香里の顔を見ると、「すみません」と言って出て行った。


(ジムか……そういう手があるわね……)


その日、由香里は授業に身が入らなかった。

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