第2話 年甲斐もなく


笠間由香里は以前は高校で数学を教えていたが、結婚を機に退職し、子供は中学校2年生と小学校5年生、どちらも男の子だった。


「ねえ、このお兄さん、イケメンでしょう?」

「バカじゃねえの」


生意気盛りの中2.長男の優(まさる)は母親の話など端から聞きもしない。


だが、小5の次男、明(あきら)は「ママ、ちゃんと写真を見せてよ」と真面目に聞いてくれる。


「カッコいいね」

「えっ、本当?」

「うん、本当だよ」


由香里は嬉しくなった。


「その人、誰なの?」

「ママと同じ進学教室でアルバイトしている大学生よ」

「へえ、先生しているんだ」


彼は写真とママをチラチラ見て、それからへへと笑った。


「ねえ、ママ」

「なあに?」

「デートしたの?」


そう聞かれて、由香里は年甲斐もなく顔を赤らめてしまった。


「あれ、好きなの?」と明に冷やかされてしまった。まだ小5だけど、やはり、こういうことには興味があるらしい。


「ち、違う、違うったら」


そう言っても由香里の顔は緩みっぱなしだった。

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