地球上から主観的に考える宇宙の構造・天動説

文明が生まれてからちょっとたって、文化が成熟しはじめた頃。

東からのぼった太陽が南へ進み、西に沈んでくという同じリズムに、人類は気がついた。

そこで、太陽の通り道には「黄道」というレールが敷かれてて、あの大きな燃える球体はそこを運ばれてく、と彼らは考えた。

地上はどこまでも平らで、不動だ。

その上を、星が貼りついたドーム屋根が覆ってることに疑いはない。

その全天が、東から西に転がりめぐりつつ、太陽と月だけは太いレール上を運行してるわけだ。

だけど時代が下るにつれ、かしこくなった人類は、どうやらこの地上は丸くて、俯瞰すると大きな球なんだ、と理解しはじめた。

それでもなお、彼らの中で、地球=巨大すぎるこの大地は、全天を含むこの世界の中心だった。

なるほど、夜空のたくさんの星ぼしは、いっせいに、一様に、東から西に向かって動いてる。

その点で、頭上に天蓋をかぶせた天動説は、世界のメカニズムをうまく説明できてて、揺るぎない。

・・・ように見える。

が、夜空をよくよく観察すると、それと逆行するような動きを見せる、つまり集団から独立して行動する星が何個かある。

説明のつかない、やんちゃな「例外」が存在することに、人類は頭を悩ませた。

金星などは極端で、明け方か暮れ方のいっときにしか姿を現さない。

それどころか、その動きを数日単位で観測すると、夜空をUターンしたり、ループしたりしてるようだ。

そこで熟考してみる。

すると、「あの星ってひょっとして、いつも太陽の側にいるんじゃね?」ってことがわかる。

考えてみれば、「暁の明星」「宵の明星」と呼ばれるその星は、裏を返せば、太陽が姿を消した深夜には決して見ることができない。

これは、太陽が地球の裏側にいる時間帯に、一緒にくっついて地球の裏側にいる、ってことだ。

太陽にお供して、地球の裏側にいっちゃってるわけだ。

あの星は間違いなく、太陽の周りを回っている!

この地球じゃなく!

かくて、地球の裏側には大きな空間がひろがってる上に、太陽の裏側にまで広い空間があるぞ!とわかったわけ。


つづく

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