第8話 強盗団のアジト

 俺はまず飛行魔法で上昇し、そこで意識を集中させる。レーダーをイメージしたところで、すぐに該当者の反応を感知した。そこからは悪党のアジトへと一直線。


 どうやらその場所は街からかなり離れた険しい山々の中にある洞窟のようだ。いきなり離れた場所に反応があった事から、相手は転移魔法を使ったのだろう。所謂一度行った場所へはすぐに移動出来ると言う便利魔法だ。

 俺も覚えてはいるけれど、生憎その場所に行った事がないために直接向かわなければならない。


 幸い、飛行魔法で最大出力を出せば、現地までは10分とかからなかった。これ、時速何キロくらい出てんだろう。計測機器がないから見当もつかないな。

 多分ジェット機くらいの早さは出ている気がする。感覚的な話だけど。


 そうして目的地の洞窟の近くに来たところでスピードを落とし、気配を消しながらまずは着地する。それからすぐに近くに見張りがいないかの確認。どうやら、見たところ出入り口付近に人の気配はなさそうだ。

 そのままゆっくりと歩いて洞窟の入口まで辿り着くと、息を殺しながらそおっと中を覗き込む。流石に中には何人かの人の気配が感じられた。


「さてと、行くか……」


 中が洞窟と言う事もあって、無用な戦闘を避けたかった俺は隠密活動をするために姿を消すステルス魔法を自分にかける。こうして誰にも気付かれなくなったところで、慎重に敵のアジトへの侵入を開始した。


 洞窟は最初からそうだったのか、強盗達が掘り進んだのか、簡単な迷路のようになっており、所々に各種の部屋が作られている。個人の部屋にトレーニングルーム、倉庫、厨房、食堂、作戦室、娯楽施設に何と酒場まで完備されていた。中々に充実した設備になっているようだ。


 とは言え、今回の侵入目的は盗まれた宝石の奪還。なので、各部屋の調査は簡単に済ます事にする。目指すはお宝を保管しているであろう宝物庫だ。強盗のアジトならば必ずどこかにあるはず。

 しかし、その一番肝心な場所は中々見つからない。強盗にとっても一番大事な場所だけに、かなり奥深くの簡単には辿り着けないような場所にその部屋を作っているのだろう。


 大体の場所を探し尽くした後、まだ探していない最後のルートに足を踏み入れる。奥の奥の最深部、入り組んだ突き当りに、ついにお目当てのそれっぽい部屋を発見した。

 そこには、とても一筋縄ではいかなさそうな頑丈そうな扉が。


「ここに違いない。うん、やっぱ鍵はかかってるよな」


 当然、盗んだお宝を集めておく部屋なだけあって、その分厚い扉は厳重に鍵がかけられていた。少し調べたところ、魔法的な結界に、物理的な鍵に、人工精霊による合言葉方式の認可式鍵の複合型になっている。


 これらを魔法を使って解除する事はそんなに難しいものではなかったものの、雑に開けると開けた事がすぐにバレてしまうため、何重にも魔法偽装を重ねがけして慎重に各種難関をクリアしていく。

 最終的に全て解錠出来たのは、作業を始めてから2時間も経った頃だった。


「おお……これはすごい……」


 無事に鍵を開けて中に入った俺を待っていたのは、あの雑魚な強盗達が集めたとは思えない程の大量のお宝の山。黄金色に輝くそれらが決して狭くはない宝物庫に所狭しと集められていた。


 お約束の宝箱の中には貴金属類に大量の金貨。高級そうな美術品に、古代兵器っぽい各種遺物。更には高級そうな武器に防具と、俺はそのお宝類に目がくらみそうになる。これだけたくさんあるならちょっとくらいちょろまかしても……と邪な誘惑にも襲われるものの、すぐに顔を左右に素早く振ってこの邪念を振り払う。

 奪われた宝石だけ取り返せればいいとお宝を掻き分けていると、そこで自分と同じ召喚人形を発見した。


「この宝物庫に……人形が?」


 この場所に保管されているのだから、それなりに価値のある人形なのだろう。確かに街で目にしたよく見かけるタイプの人形と違って、どのパーツをとっても特別仕様になっている。

 可愛い女の子のその人形は、専用の椅子にちょこんと可愛らしく座って眠っていた。


 肌の作りは生々しく、まるで本当の人間の女の子を小さく圧縮したみたいにすら見えてしまう。肩まで伸ばした髪はまばゆいほどの黄金色に輝いていて、服もまた高級そうな装飾のついたゴスロリっぽい感じの服を見事に着こなしていた。

 それがあまりにも特別すぎていたのもあって、思わず俺は手を伸ばしてしまう。


 すると、その人形は近付いた同類に反応したのか、突然目を覚ました。

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