第7話 強盗団急襲!

 街の雰囲気を堪能し終わってそろそろ帰ろうとしたその矢先、前方から住人達の悲鳴が聞こえてくる。一体何があったのだろうと俺は右手を伸ばして探索魔法を使ってみた。その結果はすぐに脳内にイメージとしてフィードバックされる。


 叫び声の原因、それは突然襲ってきた強盗団が起こしたものだった。門前の警備を強引に押し通すくらいなので、それなりの勢力のようだ。少なくと数十人単位で襲ってきている。

 こうして立ち止まって状況を分析している間に、強盗団の1人が俺の存在に気付き、くるっと方向転換して襲ってきた。


「テメェも金目の物をよこしやがれえ!」

「へぇ、ちょっと遊んでやるか……」


 襲ってきたのがモブ雑魚だったのもあって、俺はそいつを片手で軽くひねる。流れるような体捌きで一瞬の内に悪党は組み伏せられた。その後、魔法で両手両足を拘束し、その辺に転がす。最初に気絶させたので静かなものだった。

 同じ調子で何人もの盗賊を処理していると、路地裏から女性の悲鳴が聞こえてきた。


 当然、俺はその現場へと急いで向かう。すると案の定、テンプレのように女性が悪党共に襲われていた。1人の女性に対して5人の屈強な男達が取り囲んでいる。何て王道な展開なんだ。

 まだ女性は襲われたばかりのようで、特に怪我らしい怪我もしていない。この状況を確認して、俺は改めて声を荒げる。


「待てっ!」

「何だテメェはァ……」

「俺が相手だ!」

「ふん、やっちまえ!」


 定番の雑魚らしいお約束のやり取りの後、5人の悪党は一斉に襲いかかってきた。特訓の時に複数戦闘のパターンもしっかりと仕込まれていたため、俺は流れるような華麗な動きで一瞬の内に雑魚悪党を仕留めていく。

 こうして、強盗達は呆気なく面白いように拘束する事が出来た。


 初めてのお使いに、初めての対人格闘戦。うん、何もかもが完璧だ。あの修行が見事に役に立って嬉しかったものの、相手が雑魚すぎて物足りなくも感じてしまう。


「ふう、手応えないな」

「あ、有難うございます」

「いや~それほどでもぉ~」


 綺麗な若い女性からお礼を言われるのに慣れていなかった俺は、思わず頬を緩ませる。視線をそらして頭を掻いていると、その隙を狙ったのか、死角から全く気配を感じさせずに誰かが割と勢いよくぶつかってきた。


「ごめんよっ」


 慌てて相手を確認すると、それはそこら辺にいそうな軽薄そうなにーちゃんだった。不意を突かれる形になった俺は、少しだけよろめいてしまう。


「だ、大丈夫ですか?」

「あ、うん、特に……」


 女性に心配された俺はすぐに強がった。ただ、何か違和感を感じたので念のためにと持ち物のチェックをする。すると、そこで大事なものをなくしている事に気が付いた。さっき買ったばかりの大事な儀式用の宝石がなくなっていたのだ。

 そこで、すぐにさっきのにーちゃんの方に顔を向ける。


「これ、中々いいものだなぁ。貰ってくぜ」


 にーちゃんはニヤニヤ笑いながら自分が盗んだ宝石をこれみよがしに見せびらかすと、そのままフッと姿を消してしまった。どうやら魔法で姿を消したようだ。

 この街に来た一番の目的の物を目の前で奪われてしまい、俺は悔しさで胸がいっぱいになる。一刻も早くアレを取り返さねば。


「ごめん、俺、用事が出来たから」

「あ、はい。私は大丈夫です」


 俺は女性に別れを告げると、速攻で探索魔法を発動。窃盗犯の気配を辿り、その後を追った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る