一人称バージョン
第1話 あ、多分これは夢だな
「んん……あれ?」
ある日、目が覚めると不思議な場所にいて、おまけに目の前には巨大なドラゴンがいた――。
「何だこれ? 何だここ!」
そのドラゴンは俺をじいっと見つめている。あ、これは夢だ、夢を見ているんだ。それにしても深夜アニメを最近良く見るようになったとは言え、こんなファンタジーな夢を見てしまうとは……。
俺は今起きている現象をそう認識すると、1人で納得してうんうんとうなずく。
で、俺を見ているドラゴンはと言うと、俺が目覚めた事がとても嬉しかったのか顔を綻ばせている。ドラゴンって笑えるんだな。って感心していると――。
「おお、目覚めたようじゃの……」
「ド、ドラゴンが喋ったァァァ!」
ドラゴンが人語を話したショックで俺は思わず大声を上げてしまう。いやそりゃあファンタジーでドラゴンが喋るのはよくある事なんだけど、目の前でリアルに喋られるとやっぱり驚いてしまう訳で。
この時に焦って手を顔の前にかざしたところで、俺は自分の体の違和感に気付く。何故だか自分の体が人間の体ではなかったのだ。明らかに人工物で出来ている。サイズ感もどこかおかしい。目の前にドラゴンがいると言うのもあるのかもだけど、俺自身、かなり体が小さくなった気がする。
そうして、今俺がいる場所も神秘的な礼拝堂のようなファンタジーな部屋だ。
大体の状況が飲み込めたところで慌ててあちこちを見回すものの、この部屋に鏡的なものはなく、はっきりした事は分からない。分かっているのは、どうやら俺の体は人形になっていると言う事だった。
いや夢にしても、これはちょっとファンタジーが過ぎるだろ……。
「こらこら、私の事は父と呼びなさい、我が息子よ」
「は?」
さっきから俺を見つめていたドラゴンはいきなり訳の分からない事を言い始めた。当然ながら俺は返す言葉を失う。しばらく呆然としていると、ドラゴンは顎を触りながら考え込み始めた。うーん、この夢の終着点は一体どこにあるんだろう。
これからどう言う行動をとっていいのか分からなかった俺は、しばらく目の前のファンタジーな巨大生物の行動を見守っていた。
「おお! 記憶を消すのを忘れとった! お主、名を何と言う?」
「お、俺は
「やっぱり残っておったかぁーっ!」
「ちょ、え?」
俺の名前を聞いたドラゴンは突然頭を抱えて嘆き始めた。記憶を消す? それを忘れた? 夢にしては何だかリアルなその設定に俺の方も首を傾げる。状況がさっぱり飲み込めない。
シュール系の夢はたまに見るけど、今まで見た中でもとびっきり意味不明だぞこれ。
「仕方ない、記憶ありでいくか……。改めて言おう、儂の名はゼルフィス。仲間からは知の龍と呼ばれておる。龍輝よ、お主は儂が我が息子として人形の中に宿らせたのじゃ」
「は?」
「やはりすぐに理解するのは難しいか。ならば!」
ゼルフィスはそう言うと俺に向かって手をかざす。どうやら魔法的なものを俺にかけようとしているらしい。この状況に少しワクワクし始めていた俺は一切逃げる事なく、それどころか逆にその魔法に進んでかかりにいった。
「
「うわあああーっ」
ゼルフィスの魔法を受けた俺の頭に、突然膨大な量の情報がダウンロードされていく。この初めての経験に体がうまく適応する事が出来ず、俺はそのまま呆気なく意識を失った。
あれ? 本当にこれ? 夢――?
「うむ、やはりこうなってしまったか……」
ゼルフィスは倒れた俺を見ながらそうつぶやく。これが夢ならここで夢が覚めるパターンだな……。
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