第7話 ナノの秘密と新しい生活
「ただいまぁ……ゼルさん、ごめん」
「どうした? と、誰じゃ?」
「あ、うん、彼女はね……」
「はじめまして。私はナノと言います」
彼女は初めて会う龍に物怖じせずにペコリと頭を下げる。顔を上げると、すぐにこうなった事情を説明。流石にゼルフィスは物分りが早く、その一言で全てを納得していた。
自身の顎をさすりながら何度もナノの姿を覗き込む。
「お主が至高の逸品の1体か。なるほどのう。これはとんでもないお宝じゃぞ?」
「ゼルさん、ナノの事を?」
「ああ、召喚人形創成期に作られた出来すぎた人形の事じゃよ。全部で確か5体、いや6体おったじゃろうかの」
ゼルフィスの話によれば、召喚人形を完成させた術士はすぐに国から兵器転用を求められ、どこまでの事が可能か技術を競いあった時期があったらしい。その時に最高に能力を込められた一点物の究極カスタマイズ人形が何体か作られたとの事。それを俗に至高の逸品と呼ぶらしい。
この究極の召喚人形はとんでもない精密さと奇跡的な素材バランス、究極の製造テクニックによって作られたもので、制作した術士でさえ2体と同じものは作る事が出来なかったとされているのだとか。
「ま、儂の自慢の龍輝とて負けてはおらぬがの!」
「ちょ、ゼルさん……」
至高の逸品の話が終わったと思ったら突然親バカになってしまい、龍輝は頬を染めてその話を止めようとする。そんな微笑ましいやり取りを見て、ナノはくすっと可愛らしく笑みを浮かべた。
「で、あのさ、盗賊のボスが俺の目を見て……」
「分かっておる、そのラギルとか言う男、相当の手練のようじゃのう。確かどこかで聞いた事のあるような気もしないでもないのじゃが……」
「この龍の目って一体どんな……?」
「石自体に魔力を秘めておるものをそう呼ぶのじゃよ。それにの、優秀な記録媒体にもなっておる。目を見ればお主が今まで見たものを全て確認する事が出来るのじゃ」
そう、龍輝の訴えがすぐに受け入れられたのは、ゼルフィスが彼の目として仕込んだ龍の目の記録を読んだからだったのだ。
こうしてからくりも分かり、彼は色々と納得する。
「でさあ、ナノの事なんだけど……」
「分かっておる。どうじゃ? ナノ殿、ここで儂らと共に共に暮らさぬか? 龍輝にも良き友が出来て嬉しいのじゃが」
「それを今からどう頼もうか考えていたところです! 有難うございます! よろしくお願いします!」
同居の提案をされたナノは嬉しそうに声を弾ませて、思いっきり勢いよく頭を下げる。こうして2体の特別な召喚人形は、ゼルフィスの保護下で仲良く暮らす事になったのだった。
その後も色々とあったりするものの、この話の続きはまたいつか――。
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