第3話

急げ急げ〜。」


摩耶が軽い口調で全員に促す。


朝起きるのが遅れたり沙耶を起こすのに手間取ったり、弁当を作ったりで時間はあっという間に去り、時刻はもう7時40分だった。


僕は高校までチャリを飛ばしても最低25分掛かる。


校門通過時刻は8時10分までなので急がなければ間に合わない。


「ほい、摩耶 弁当、部活頑張れよ。」


僕は摩耶に弁当を渡す。


摩耶は女子ソフトテニス部に所属している。


始業式と終業式は午前でクラスが終わり、給食が出ないため弁当を持っていかなければいけない。


「うん、ありがと。」


摩耶は二パーっと笑って、


「行っってきまーす。」


と抑揚のつけた言い方をして急ぎ足で出て行った。


それを追いかけるように沙耶が「待ってよー」と急いで行った。


と、思ったら沙耶が戻ってきて


「今日家帰ってきたら誰かいる?」


と聞いてきた。


沙耶は帰宅部なので午前中に帰ってくる。


心配だったのだろう。


「うん、今日は冬姉がいるはずだから一応鍵持って行っといて。」


と言うと「うん分かった」と言ってまた急いで出て行った。


はぁマジ妹二人可愛い。マイエンジェル沙耶アンド摩耶だわ。


「妹二人が行ったんだから早く優君も出ないといけないんじゃ無い?妹にデレデレして送れないようにね。」


冬姉がウインク付きで言ってた。


確かにそうだった。急がなければ。


「ん?冬姉学校は?」


準備を終えてドアを開けたところでダラダラしていた冬姉に聞く。


「大学はまだ先だからだいじょうぶ」


と言ったので、僕は家を出た。


もちろん妹達と同じようにダッシュではなく急ぎ足で。

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