第17話・夏休みは人それぞれ
颯斗たちが喫茶店「チェッカー」に移動している頃、G市商店街の南端にあるインドアCQBサバゲーフィールド「THE・House」に嵐斗はいた。
元々は車の修理工場だった町工場を改装して作られたサバゲーフィールドで車の修理工場として使われていた設備は全て取り払われており、代わりに木の板で作られた高さ1m・幅70cmのバリケードとドラム缶が遮蔽物として並んでおり、中央には廃車になって窓ガラスとドアが取り払われた市バスが設置されていた。
入り口付近のセーフティエリア(待機所)には上は40代の初老の男性から下は18か20代前半の男女と森林使用、砂漠使用などの様々な迷彩服を纏ったゲーム参加者が各々のエモノにBB弾をこめて、中にはストレッチをしている者がいる中、奥の方で嵐斗含むアーカム高校・サバゲー部のメンバー6人がいる。
「整列!」
3年生と思しき砂漠迷彩の迷彩服を着て、ゴーグル付きのヘルメットをかぶった女子部員が声をかけると、その場にいた5人は一列に並ぶと女子部員は整列したのを見て、クリップボードを手に取って「出席取るよ?」と言ってメンバーの名前を呼ぶ。
女子部員「ユイちゃん!」
砂漠迷彩の迷彩服を着て同じ迷彩のコンバットキャップを被った女子部員「はい!」
女子部員「りっちゃん!」
第5話と同じ迷彩服を着てブーニーハットを被った里奈「はい!」
女子部員「嵐斗君!」
嵐斗「はい!」
女子部員「助ちゃん!」
都市迷彩の迷彩服を着て同じ迷彩柄のヘルメットをかぶった男子部員「はい!」
女子部員「俶君!」
第8話と同じ迷彩の迷彩服を着てブーニーハットを被った俶「はい!」
女子部員「それで最後に私、中梅 明里と……」
明里はそう言ってクリップボードのレポートにメンバーの名前を記入して、部活動で行うサバゲーに関する説明を始める。
「入部の時は部長のダイちゃんが言っていたけど、今回は代理のあたしが改めて「部活動でのサバゲー」に関しての注意事項を説明するよ!」
明里はクリップボードを隣の荷物が置かれたテーブルに置いて、聞こえるように説明した。
「ひとつめ! ゲームに参加するサバゲーフィールドのレギュレーション(そのフィールドに関する注意事項などの説明)をキッチリ受けてからゲームに参加すること! ふたつめ! 反則行為は決してしないこと! みっつめ! 一般人との揉め事は決してしないこと! 自分に非があったら必ず謝罪するように! よっつめ! ゴミはキチンとゴミ箱に! 公共の場でのポイ捨て、ダメ! 絶対! 最後に! 以上の事を全て守って楽しくサバゲーをすること! 解った?」
明里の問いにメンバー全員が「はーい!」と元気よく返事をして、各々準備に戻った。
一方、依吹はと言うと……
帽子を脱いだ額から汗を流しながらちゃぶ台の前で白のタンクトップと黄色のバスパン姿の茶髪ロングヘアの女子と一緒に原稿にペンを走らせている。
壁にかけられたエアコンはついておらず、全開に開いた窓からは湿気の多く含んだ蒸し返すような空気が入るだけで、首振りの扇風機がその空気を2人に当てていた。
ちなみにこの時のこの部屋の室温は36度と外よりも暑い。夏場は外で熱中症になると思われがちだが、外の熱が籠りやすい室内の方がもっと危険なのである。
「暑い……むっちゃん、エアコン壊れてるのなんでもっと早く教えてくれなかったの?」
依吹の問いに向かいに座っていたむっちゃんこと上杉 睦美(むつみ)は「だって、壊れたのいーちゃん(依吹のあだ名)が来る10分前のことだもん」と答えた。
流石に暑さで集中できなかった依吹は原稿の手を止めて、睦美にあることを提案した。
「ねえ、むっちゃん……今から涼しいところに行かない?」
そんな依吹に睦美は手を止めずに答える。
「図書館も昨日からエアコン壊れてるから「図書館で作業」は無理だよ」
そう言われた依吹はウグッと苦い顔をするが、家を出る前の事をふと思い出した。
「じゃあさ……商店街にある喫茶店「チェッカー」に行かない?」
少しでも集中しやすい環境の場所に行きたかった依吹だが、睦美はそんな依吹にこう言った。
「いーちゃんの奢り? 言っとくけど私は今度の夏祭りにお金取っておきたいから今月節約中だよ? どうせならいーちゃんの家に行った方がいいと思うけど? エアコン壊れてないなら話は別だけどさ」
その手があったかという顔をする依吹を見て睦美は「暑さで頭が沸いてたでしょ?」後頭部に怒りマークが浮き上がっていた。
そして、眩しくて肌を焼き焦がすような日差しが降り注ぐ中、颯斗たちは商店街にある喫茶店「チェッカー」についた。
雑居ビルの1階にある昔ながらのモダンな雰囲気のある店構えで、中に入るとオレンジ色の照明に艶のあるダークウッドのカウンターにテーブルと椅子が店主のこだわりをうかがわせる。
「いらっしゃい!」
カウンターからそう3人に声をかけるいかつい男性声が聞こえ、3人の視線はそちらに向くと、そこにいたのは、ピンクのYシャツに黒のエプロンをつけ、サングラスをかけたスキンヘッドのボディビルダーのように筋骨隆々の大柄の強面の男性がいた。
歳は30代後半か? 身長190cmは有りそうなその体格からイメージしていた店とはだいぶ違うことに困惑する颯斗に店主は「3名ですか?」と尋ねる。
「あっ! はい……そうです」
辛うじて我を取り戻した颯斗はそう言って席に案内してもらい2人と向かい合うように座った。
店内には自分達以外の客がいないことから嵐斗の言っていたいことに疑問を覚える。
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