第16話・夏へ飛び出す
あれから少し経って、時刻はお昼過ぎの13時、目が覚めた颯斗たちは各々に今日の予定にかかった。
勉強会の予定の颯斗は自室でいつものお出かけ用の服に着替えてノートと筆記用具の入った黒のナイロン製ペンケースなどの勉強道具をカーキ色のボディバックに詰めて左肩にかけた。
サバゲーの予定の嵐斗はサバゲーの迷彩服に袖を通して袖を捲り、黒のナイロン製ガンケースにポンプアクションショットガンを入れ、ハンドガンを入れるホルスターのついたナイロン製ガンベルトと肘や膝につける黒のパッドを黒のリュックサックに詰めてチャックを閉じて背中に背負い、ガンケースを右手に持つ。
アシスタントをしてくれる友人のところで原稿を描く予定の依吹は黒のTシャツにジーンズ姿で白の半袖Yシャツを羽織り、カジュアルなデザインの茶色のリュックに数枚のA4サイズの白紙が入ったクリアファイルと颯斗と同じナイロン製ペンケースを詰めて赤と白のツートンカラーのキャップを被って部屋を出た。
3人揃って部屋を出て、颯斗から順番に階段を降りる。
依吹は両腕に日焼け止めクリームを塗りながら「お兄ちゃんたちも日焼け止め使う?」と奨めるが嵐斗は「俺はもう塗ってある」と黒のバンダナを頭に巻きながら答え、颯斗は「俺は帽子があるからいい」と答えてカーキ色のキャップをバックから取り出して被った。
3人は外に出て自宅の裏の自転車置き場に向かった。嵐斗は自転車の荷台の右にガンケースを固定してスポーツタイプのサングラスをかけながら自身より先に出ようとしている颯斗にこう言った。
「兄さん、勉強会なら図書館よりも商店街にある「チェッカー」っていう喫茶店に行くといい」
不意なアドバイスに颯斗は「どうしてだ?」と尋ねると、嵐斗は自転車のスタンドを上げながら答える。
「俺が行きつけにしてる店なんだけど、面倒見のいい大学生たちが多く来る場所でマスターが受験勉強をしている人に良く話しかけるんだ。それで何の学科を専攻しているかを言うと、同じが学科を専攻している人が店にいる時に講師を付けてくれる」
耳寄りな情報を手に入れた颯斗はデート場所としては悪くなさそうだということもあって颯斗は早速行ってみることにした。
「解った「チェッカー」だな? 行ってみるよ」
そんな話をしていると後ろから「ねえ! お兄ちゃんたちが出てくれないとあたしも出れないんだけど!」と依吹が急かしてきた。
依吹に急かされて、颯斗は「おお、スマン」と謝ってから自転車を手で押し、3人はその場で別れる。
一方、中町宅にて……
杏奈はジーンズの半ズボンを穿き、黒のタンクトップの上に赤のジップパーカーを羽織って蜜奈は白と水色のストライプの半袖Yシャツに藍色のワイドパンツを穿いて、杏奈は黒のボディデュックに、蜜奈はベージュのトートバッグに課題のテキストと筆記用具を詰めて玄関に向かった。
玄関で杏奈が何時も履いているスニーカーに足を入れていると、蜜奈は下駄箱から茶色の革製アンクルストラップサンダルを取り出した。
「それ先月買ったヤツ? 靴擦れしない?」
杏奈はそう蜜奈に尋ねると蜜奈はウキウキした口調で「先週に履き慣らしたから大丈夫!」と答える。
それを聞いた杏奈は「蜜奈はオシャレさんだよねー」と言うと蜜奈は「杏奈はお料理上手じゃないですか」とお互いの長所をあげながら家を出た。
そして、待ち合わせ場所の市立図書館前にて……
颯斗は入り口の日陰でスマホを弄りながら2人を待っていた。
立木に止まっているアブラゼミが「ミーン! ミーンミン!」と喧しく鳴き、木の枝の隙間からは山のように荘厳な入道雲が青空に浮かんでいる。
杏奈「颯斗君!」蜜奈「颯斗さん!」
不意に名前を呼ばれた颯斗は顔を上げると、杏奈と蜜奈がこちらに駆け寄ってきた。
・颯斗は語る
突然だが「兄弟とは似て非なる者同士だ」と何か聞いたことがある。
前のデートの時もそうだったが、杏奈は外に出る時はラフな格好なのに比べて蜜奈は最近の流行を取り入れたようなオシャレな服装の時が多い。
そして、杏奈とのデートの事を嵐斗に話した際に聞いた話だが、杏奈は俺の家と同じで両親が仕事で帰りが遅い時は炊事係をするほど料理上手らしい。
前のデートの時に作ってくれたカップケーキは……まあ、あの時は恐ろしいモノを見たせいで味覚が麻痺していたからなんとも言えないが、杏奈は家庭的な面での魅力があり、蜜奈は外面での魅力がある。
この日の気温は30度で炎天下の中を自転車で走ってきたばかりの姉妹は冷房の効いた図書館に入ろうとしたが、颯斗は入り口の自動ドアに貼られた貼り紙を右手の親指で指しながらこう言った。
「来たばかりで申し訳ないんだけど、図書館のエアコン壊れてるらしいから違うところ行こうか」
そう、図書館の入り口の自動ドアに貼られた貼り紙に赤のマジックで「エアコン故障中」と大きく書かれていた。
それを見て大きく落胆する2人に颯斗は嵐斗に教えてもらった喫茶店にいくことを告げる。
「商店街にある「チェッカー」っていう喫茶店なんだけど、ここから10分もかからないから」
だが、2人は心の中で揃ってこう思う。
杏奈・蜜奈((御自宅にお邪魔とはいかないのか……))
そんな淡い期待に心の中でチッと舌打ちをする姉妹であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます