第6話・・・プロポーズ⑴・・・

「いや〜北海道はいいねぇ。」

「そうだね、悠佑ゆう。」

優しい顔で、雪が微笑む。可愛い。

「来て良かった、夏の北海道。」

「うん。そうだね。」

俺は、今晩、雪にプロポーズと言うものをする。雪はこのことを知らない。

 プロポーズ。俺はこの言葉が好きだ。響きもそうだが、聞いた瞬間鳥肌が立つ。何かかっこいい。

「見て見て悠佑。」

「なに?」

「おっきい、牛さんだよ!」

「うん。そうだね。」

「ねぇねぇ、あれ、風車だよ!」

「うん。すごいね。」

雪は、俺を呼んでは、指差し、飛びまわる。新しい土地にきた犬みたいだ。

「ねぇ、悠佑。・・・疲れた。」

「・・・はっはっはっはっは。」

可愛すぎんだろ。俺は、目に涙を浮かべて笑った。そんな俺を、雪は、不思議な目で見ている。

「ふぅ。はぁ。よし、ホテル、行こっか。」

「うん!」

雪は、コロコロ表情が変わる。それが、なんか子供を見ているようで可愛い。


 彼女とは、会社で出会った。俺は、経理部。彼女は、総務部だった。

 ある、桜が満開の日。屋上で、お昼ご飯を食べている時だった。

  ガッチャン

 ドアが開き、一人の女の人が入ってきた。その時、俺の心臓が激しく脈打った。年齢は、俺と同じぐらいだろうか。その瞬間に俺は、その彼女に一目惚れしたのだ。

「あの、隣、いいですか?」

彼女は、無邪気に聞いてきた。

「どっどうぞ。」

俺の声は、裏返っていた。

「緊張、しますね。」

ちらっと、彼女を見た。桜が彼女を遮る。その様子が、ただただ美しくて、鳥肌がたった。

「そ、そうですね。」

ネームカードを見た。

「雪さん・・・ですか。綺麗な名前ですね。」

目が、合った。ドクドクドクと、心臓が脈打つ。

「ありがとうございます。えっと、悠佑さん。」

雪さんが、俺のネームカードを覗きこんで言った。その動作が、官能的でドキっとした。

 雪さんが食べ終わって立ち上がろうとした時、思わず

「明日も、一緒に食べませんか?」

と、言ってしまった。

「・・・もちろん。いいですよ。」

一瞬びっくりした顔をしたが、彼女はニッコリ笑った。

 それから、俺は雪と一緒に屋上で昼食を食べることが当たり前になった。


 告白は、彼女からだった––––いや、俺からだったと言えるかもしれない––––。いつも通り、昼食を食べた。彼女は、かなり緊張していて、その日は口数が少なかった。俺が立ち上がろうとすると、

「あの。」

と、言った。

「実は、私、悠佑のことが・・・す」

おぉ、これは、告白じゃないか。俺にも、モテ期が・・・・じゃなくて、

「待って。」

俺は彼女の声を遮った。

「この先は、俺に言わせて。––––––」

俺は、深呼吸をした。心臓が高鳴っている。

「––––––俺は、雪のことが・・・好きです。付き合ってください!」

俺は、顔を下げ、手を出して、目を閉じた。

  ドクドクドクドク

そぉっと、冷たい雪の手が、俺の手を包み込んだ。

「よ、よろしくお願いします。」

緊張で声が震えている。

「まじ?」

思わず、勢いよく頭をあげた。

  ゴツン

「いった〜ごめん。大丈夫?」

覗き込んでいた雪の頭が当たったのだ。

「大丈夫。」

目が合った。なんか、照れくさくて、笑ってしまう。

 どちらからともなく、近づいた。俺の唇に、雪の柔らかい唇が吸い付く。


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