3話 魔女ヤーフェ(壺)
「日も暮れてきたな、暗くなる前に買い物をすまそう」
流れていくガラクタを眺めながら歩を
「予算は1000リール位か、会話が出来る分魔石は買えるな。残りは……久しぶりに外で食べるか」
久しぶりの外食に心が弾む。元の世界の常識が当たり前の様に通じなくて初めは四苦八苦したが大分この世界の常識とやらに慣れてきた。しかし無理な物もある、それが食事だ。この異世界の食べ物は兎に角味が薄い、旨味が物足りないのだ。思えば当たり前の話だ、遺伝子改良に化学調味料。そこに培った知恵を駆使した現代の食べ物と異世界の素材をお楽しみ下さいみたいな食べ物とでは勝負にすらならない。我慢は出来る、しかし1度食べた味が忘れられないのは仕方がない事だ。
「味噌汁飲みたい……味噌ってどう作るんだ、大豆を発酵する位しか知らんぞ」
そうして異世界生活での愚痴が止まらないまま独り言を呟いていると目的のお店に到着した。
「愚痴っても前には進まないか……おーいババア、生きてるか?オレだ。魔石は売ってるか」
「なんじゃコクトーか、魔法使いの類いでも無いのにまた魔石かい。ほれこんな物しか無いぞ」
「相変わらず小さいな……ってコレだけ少し大きいけど?」
「ん?ああ、昨日買い取った奴かね。卒業組がバジリスクを1匹倒したらしくてね、その時のドロップアイテムじゃよ」
「へぇー卒業組って事は卵のクエストか、逃げれば良いのにそりゃ凄い。どんなパーティーだった?」
「初耳かいコクトー。お前さん冒険者でもない流れ者なんじゃからもう少し耳を広げた方が良いじゃろ。ほれ、あの仮面で顔を隠して槍を持ってるあのパーティーじゃ」
「あー彼奴等か立派に成長した物だな、確かに他の連中と違ってリスタート1回だったもんな」
リーダーの
「そしてリリアとほぼ同時期に冒険者になったと言う、悲しいな」
「リリア?ああ、まだ生きてるのか冒険者には向かんわなぁあのエルフ。元気にしとるか?」
「ん?ああ、少し前復活してクエスト受けに行ったぞ。間違いなく元気に死んでる」
「人でなしじゃなぁコクトー……録な死に方せんぞい」
「先に死にそうな奴が言ってもなぁ……で、これいくら?」
「そうじゃなぁ腹が立ったから3割増しで……冗談じゃどうせまとめて買うじゃろ、買い手もお主位じゃまとめて800リールでどうじゃ?」
「ああ、それで良いよほら」
「即決かい交渉のしがいが無いのぉ」
カウンターに置いた革袋の中身を確認しながらぼやく店主に適当に返事を返しておく。だって交渉とか面倒だし疲れるし嫌なんだよな。
「ほれ、何に使うか知らんが扱いには気をつけるんじゃぞ。それとあのエルフの事もなぁ」
「変な事には使わないよ、それにアイツの事は大丈夫だ安心しろ明日回収してやるから」
そう言い残し店を出る。後ろで店主がやれやれと言っている様な気がしたが小言は聞きたくないので無視して家に帰る事にした。外に出るとまだ夕暮れだった。
「――――さて」
石造りの橋の下にある小さいな借家が今のオレの住む家、軋むドアを開け明かりをつける。魔力を通すパイラインから魔力が供給され明かりの役割を持つクリスタルが照らし出される。無造作に置いた壺を拾い上げ先程購入した魔石を放り込む、底の見えない壺を覗き込み返事が返ってくるのをベットの上で座りながら待つ。
「――――モグモグ。ほお~粘液味には飽きてた所だったんだ、鶏肉旨し」
「起きたかヤーフェ」
「ぷっは~やぁヤーフェちゃんがお目覚めだぞ」
「時間を無駄にしたくないから雑談は抜きだ。質問するぞ」
「―――ああ、構わないよ。この魔女ヤーフェに質問したまえ、契約者コクトウ君」
今まではこの異世界で生きていく為の相談や生きるすべを学ぶ為に魔石を消費していたがこの半年で生きていく力は充分身につけた。だから、今日聞くのはもっと根本的な内容だ。
「答えろ、何でオレをこの世界に呼んだ」
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