第51話:ある都市伝説の真相-Ⅱ
「・・・・・・・・・・・・」
言葉はなかったが、それでも小さな首肯を見て取った。
それぞれ人間には色々な事情があるだろうし、その重さも異なるだろう。
複雑な感情な混じり合った楓人とは違った寂しさの形があるのも理解している。
そうだとしても、この真相を知ってそのままには出来ない。
「それなら、今は思いっきり遊ぶか!!」
楓人は子供達よりも子供のような笑顔で叱ることもなく告げる。
成長する内に色々なことが待っているだろうし、今だけ楓人達と遊んだからといって全てが解消されるはずもない。
悪い言い方をすれば根本的な問題は解決していない、その場凌ぎにしかならないかもしれない。
だが、それでも今の状況を放っておくよりはマシだった。
寂しさから道を踏み外す人間は何人も見て来たから、何もしないままで帰ることはできなかった。
「遊ぶ・・・・・・?」
楓人の周囲のメンバー達も最初は怪訝そうな顔をしていたものの、カンナは最初から何となく納得した表情だった。
続いて、すぐに椿希と柳太郎も察したように微笑んだ。
三人とも楓人がこういう人間を放っておけないことは付き合いの長さから知っているからだ。
「おう、その代わり約束してくれ。寂しいのはわかる。でもな、絶対に人に迷惑はかけちゃダメだ」
寂しいからと言って何をしてもいいというわけではない。
ただ、楓人は子供二人の事情を完全に知っているわけでもないのであまり踏み込んだことは言えない。
だから、出来るのは他人と触れ合うということの温かみを少しでも思い出して貰うことだけだ。
「「・・・・・・うんっ」」
二人して元気の良い返事が来たのを見て、楓人は一つ頷いた。
もう似合わない説教臭いことは、これ以上は言う必要はあるまい。
「勝手なことして悪い、付き合ってくれると嬉しい」
メンバーに一言詫びて頼み込む。
この後は本来なら神社に行ってすぐに帰る予定だったのだが、予定が大分狂うことになる。
「別にいいわよ、予定があるわけじゃないし」
「オレも別にいーぜ、楓人らしいしな」
「ああ、俺も構わんぞ。身体能力の差を考えるとかくれんぼ辺りがいいのではないだろうか」
「そうね、どうせ明日も休みだし」
「うん、そっちの方が楽しそうだよね」
燐花、柳太郎、光、椿希、カンナと順番に二つ返事で了承してくれる。
子供の遊ぶのなんて面倒だと言い出す意見も想定はしていたが、誰も反対などしなかった。
そう言えど、こんな子供達を見て放っておけないお人好しばかりなのでこうなるだろうと思ってはいたのだが。
「さて、それじゃかくれんぼするぞ。何か言いたいことあるか?遠慮はいらないからな」
「お兄ちゃん、だれとコーサイしてるの?」
安心して饒舌になったかと思えば、随分とマセた子供だった。
「いや、特に交際はしてないが・・・・・・お前ら、本当に小学生か?」
最初に出て来る質問がそれとは、随分と田舎は男女関係においてはお盛んな文化が根付いているらしい。
隣の女の子も興味津々と言った顔で、全員を見比べている。
楓人の恋人探しの割に光や柳太郎にも視線が向いているのはなぜだろう。
「なー、ちなみに誰だと思う?指差していいからよ」
柳太郎がにやりと笑って子供二人に訊ねる。
「「この人ー!!」」
男の子が椿希、女の子がカンナを指さす。
指名された二人はびくっと肩を震わせた後で気まずそうに楓人を一瞥した。
一転して、何もしていないのに浮気したような状況になっていた。
「別にどっちとも付き合ってはいない。それより、何して遊ぶかを考えるか」
「「・・・・・・・・・」」
視界の端で顔を見合わせたカンナと椿希が何故か、くすくすと笑い合っていたが、よく意味がわからなかった。
まるで共通の話題でも見つけて、嬉しそうな友人同士といった様子だ。
そして、楓人達は思わぬ相手と空がオレンジ色に染まるまで遊ぶこととなった。
童心に返って今を全力で楽しむ、あの頃の無敵だった自分に返った気分だった。
逆にこんな何も考えないで遊んだのは久しぶりだった。
こうやって目の前の出来事を楽しめる、そんな世界を変異者にも実現してほしいから戦っているのだと改めて思ったのだ。
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